コラム

「ロシア軍は雪に強いシベリアの部隊を配置した。クリミアの時と同じだ」──ウクライナ兵を訓練した元米兵に聞く

2022年01月31日(月)10時43分

主にロジスティックや医療用で、戦闘を行う歩兵ではなく、より多くのサポートサービスを提供するためのものだ。ウクライナ軍とウクライナの国民は14年以降、ロシア軍との戦い方について多くのことを学んでいる。

――プーチン氏が昨年秋以降、ウクライナに対する圧力を強めている理由は何だと思いますか

ロペス氏:プーチン氏が見ているのは主に二つだ。一つは経済的な問題で国内での人気が高まっていないこと。二つ目はバルト三国とポーランド、ハンガリーにNATOの基地ができたことだ。冷戦時代、米軍は西欧に43万人の戦闘部隊を配備していた。

プーチン氏が部隊を展開できるのは飛び地のカリーニングラードと、同盟国のベラルーシだけだ。米英仏やその他の国々がバルト三国や旧東欧諸国に部隊を送り込み、アメリカは米兵8500人の派遣準備を強化した。

これは軽装歩兵旅団かもしれないが、重装備の対戦車能力を持っている。ソ連時代からロシア軍にとって重要なことの一つは戦車部隊を突破口にして歩兵がフォローすることだ。

プーチン氏は関心を引くために大規模な部隊を貼り付けるという間違いを犯している。これに対してNATOはプーチン氏が嫌がる対応をしている。

――あなたが説明されるようにウクライナ軍が強くても、対空防御が十分でなく、戦略兵器も持っていません。これでロシア軍の侵攻を防げますか

ロペス氏:歴史的な攻撃の概念を思い起こしてほしい。攻撃するには対峙する相手の3倍の兵力が必要だ。仮にロシア軍が10万人のウクライナ軍を攻撃するとしたら30万人の兵士をそろえなければならない。攻撃より防御の方がやさしいのだ。

ロシア軍が抱える問題はドネツクやルガンスクを通過しなければならないことだ。この地域には塹壕がある。ソ連が第二次世界大戦で使用して呪われた防御力と深さがある。一カ所ではなく、ベルトのように延びている。

ロシア軍が大量の大砲やロケット砲を持ってきたら、それが侵攻の一つのシグナルだ。ロシア軍が20~30台のトラックにそれぞれ40発のロケット弾カチューシャを積んで並べる。82ミリから310ミリまでのロケット弾があり、大きなダメージを与えることができる。

ウクライナ軍の兵士たちにこのような大砲やロケット弾が落ちてくると考えさせる。これに対してウクライナ兵は移動するかもしれないし、動かないかもしれない。あの地下壕は深く、何キロも続いている。

ロシア軍がウクライナの領土を攻撃し、ウクライナ人を殺すことに何のメリットがあるのか。ロシアはウクライナの人々を助けるために大規模部隊を国境沿いに展開していると言っていたのに、砲撃ですべてが破壊されてしまう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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