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「ロンドンはオミクロン株の首都になる」対策強化よりクリスマスを優先させた英首相のギャンブル
ピーター・イングリッシュ前英医師会(BMA)公衆衛生医学委員会委員長も「NHSをはじめ多くの公共・民間サービスが新年1月に逼迫するのはもはや避けられまい。 今から行動を起こせば被害を減らすことができるが、完全に防ぐには遅すぎる。一人ひとりが 他人との接触を最小限にし、屋内イベントには可能な限り参加しないことだ」という。
英政府の非常時科学諮問委員会(SAGE)は「プランBより厳しい規制がとられない限り、イングランドでは1日の新規入院患者が3千人を上回る恐れがある」と警鐘を鳴らしている。しかしイギリス全体の1日の新規感染者数は今のところ9万人余で頭打ちになり、新規入院患者も800人台で横ばいになっている。
オミクロン株はロンドンで劇的に増えているものの、イギリス全体で平均すれば指数関数的には増えていないように見える。ジョンソン首相は「平均の罠」を巧みに利用して国民や飲食店やホテルなどホスピタリティー業界が反対するクリスマス・ロックダウン(都市封鎖)の最悪シナリオを回避することを優先したと言えるだろう。
世界から締め出される恐れも
リシ・スナク英財務相は先手を打ってホスピタリティーとレジャー産業に10億ポンド、日本円にして約1500億円の財政支援を約束した。一方、最大野党・労働党のサディク・カーン・ロンドン市長は18日に「重大事態」を宣言して警戒を強める。移民が多いロンドンではワクチンの接種率が50%を下回る地域もあるからだ。
オミクロン株のリスクは人によって大きく異なる。若くて健康な人には風邪と同じでも、高齢者や基礎疾患を抱えるハイリスクグループ、ワクチン未接種者には命に関わるリスクになりかねないのだ。すでにイングランドでは129人が入院し、14人が死亡している。感染者が増えれば必然的に入院患者、重症患者、死者も拡大していく。
英公衆衛生トップは非公式会合で「このままオミクロン株の感染を放置すれば、ロンドンはオミクロン株の首都になる」と強い口調で警告を発した。フランスはイギリスからの渡航を制限したが、感染爆発を防げなければイギリスは世界から締め出されてしまう恐れがある。自らの政治生命を延ばすためのジョンソン首相の賭けは極めて危険と言わざるを得まい。