コラム

「グレタは欧米に利用されないためにより良い教育が必要」とこき下ろした中国・環球時報

2021年11月02日(火)21時40分
グレタ・トゥンベリ

COP26に参加する各国の指導者たちを痛烈に批判するグレタ・トゥンベリ(11月1日、英グラスゴー) Russell Cheyne-REUTERS

<石炭火力発電所の建設を続ける中国を「気候変動の現実を無視している」と非難したグレタに、中国共産党機関紙の環球時報がかみついた>

[英北部スコットランド・グラスゴー発] 英北部スコットランド・グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)。「参加している政治家は私たちの未来を真剣に考えているふりをしているだけだ」――。

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(18)は120人以上の首脳が集うCOP26世界リーダーズ・サミットが始まった11月1日、グラスゴーでの街頭活動でこう訴えた。

「COP26はこれまでのCOPと同じで、私たちをどこにも導いてくれない。COPでは政治家や権力者が私たちの未来を真剣に考えるふりをしているだけだ。これはリーダーシップではない。変革を求める私たちの行動こそがリーダーシップなのだ」

グレタさんは9月下旬、言葉ばかりで行動が伴わない世界の指導者たちの地球温暖化対策へのコミットメントを「くだらない、くだらない、くだらない(Blah, Blah, Blah)」と切り捨てた。

「ノーモアBlah, Blah, Blah」が温暖化対策の強化を求める若者たちのスローガンになり、脱石炭や電気自動車など脱炭素化の成果をあげたいホスト国のボリス・ジョンソン英首相もオープニングセレモニーで「Blah, Blah, Blah」を引用して各国の政治指導者に行動を促したほどだ。

グレタさんは10月29日、ロンドンで化石燃料事業への融資をやめるよう金融機関に訴える抗議デモにも参加。「人類の破壊に資金を提供するのをやめるよう求める。銀行は未だに化石燃料に多額の資金を投入し、地球を不安定にし、多くの人々の命を危険にさらしている」とツイートした。

「中国の石炭火力発電所建設は気候変動の現実を無視している」

英BBC放送の日曜番組「ザ・アンドリュー・マー・ショー」で「中国がいまだに石炭火力発電所の建設を続けているのに、なぜイギリスは変化を起こさなければならないのか」と尋ねられ、グレタさんは「誰かを非難するのは簡単。だからこそ国際社会の協力が必要だ」とする一方で「中国の石炭火力発電所建設は気候変動の現実を無視している」と答えた。

これに中国共産党機関紙、人民日報系の国際版、環球時報(電子版)がかみついた。

「15歳から学校をサボって、いわゆる気候変動デモに参加しているトゥンベリは欧米では熱心な環境保護活動家として描かれる。彼女は欧米が排出量を抑制するために十分な努力をしていないという事実から目をそむけさせるための優れた道具なのだ」

環球時報によると、グレタさんは中国のネットユーザーから「欧米政治家の操り人形」というあだ名をつけられているという。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防長官候補巡る警察報告書を公表、17年の性的暴

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ワールド

サハリン2はエネルギー安保上重要、供給確保支障ない

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story