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COP26で外交デビューの岸田首相に不名誉な「化石賞」
グラスゴーで開催中のCOP26でつっかえつっかえ演説を読む岸田首相(11月2日) Hannah McKay-REUTERS
<石炭火力発電を温存延命しようとする日本の方針は、2030年までに石炭火力発電の廃止を唱える議長国のジョンソン首相や世界の主張に逆行>
[英北部スコットランド・グラスゴー]2日、英グラスゴーで開かれている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の世界リーダーズ・サミットで岸田文雄首相が演説した。
「この10年が勝負。高い野心をもってともに全力を尽くそう」と日本語で力説したものの、国内だけでなくアジアでも化石火力発電を残す緩和策だったため、国際環境団体から不名誉な「本日の化石賞」に選ばれた。
「本日の化石賞」は温暖化対策や交渉の足を引っ張った国に贈られる。岸田首相の受賞理由は「演説で化石燃料の火力発電を推進した」ことだ。
COP26では厳重な要人警護とコロナ対策で運営が大混乱している。このため議長国のイギリスと、非常に低い温室効果ガス排出量の削減目標を掲げたオーストラリアに初日の「化石賞」が贈られた。
岸田首相は「2050年カーボンニュートラル」を実現するとして、30年度の排出量を13年度比で46%削減し、さらに50%に向け挑戦を続ける方針を繰り返したものの、ボリス・ジョンソン英首相が主導する「脱石炭」とは全く逆行する温暖化防止の道筋を示した。
アジアを中心に再生可能エネルギーを最大限導入しながら、化石火力をアンモニア・水素などの「ゼロエミッション火力」に転換するため1億ドル(約114億円)規模の先導的な事業を展開するという。
岸田首相の手土産は「脱石炭」ではなく、100億ドルの追加支援
岸田首相は先進国全体で年1千億ドル(約11兆4千億円)の資金目標の不足分を補うため、すでに表明している5年間で官民合わせて600億ドル(約6兆8400億円)の支援に加え、アジア開発銀行などと協力し、最大100億ドル(約1兆1400億円)の途上国への追加支援を行う用意があると表明した。
ジョンソン首相は、先進国は30年までに石炭火力発電の廃止、途上国も40年までの廃止を掲げる。10月の岸田首相との電話会談では「国内の石炭火力発電の廃止に関する日本の誓い」を期待したが、岸田首相がCOP26に持参したのは100億ドルの追加支援だった。
環境NPO「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表は「大変残念な外交デビューとなった。日本政府は30年の電源構成に占める石炭火力発電を19%とし、50年に向けて石炭を維持する方針だが、これを見直す意思は示されなかった」と指摘する。
「『アンモニア・水素などの脱炭素燃料の混焼や二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)/カーボンリサイクルなどの火力発電からのCO2排出を削減する措置の促進』とした第6次エネルギー基本計画をもとに、アジアの国々にも同様の対応を表明したが、アジアの脱炭素化をも遅らせることになる」と批判した。