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中国のハッカー攻撃を米欧日が非難、狙いは南シナ海の制海権と感染症情報
一方、APT40のターゲットは通商だけでなく、情報やデータ、保健分野の感染防護具やワクチンに及ぶ一帯一路構想の要衝だ。2013年以降、海運、防衛・航空機産業、化学、研究・教育、政府、技術機関にハッキングを仕掛けてきた。エンジニアリングと防衛に重点を置く一方で、東南アジアなど地域の現地企業に対するサイバースパイも行っている。
ファイア・アイは「APT40の活動は海軍力を近代化しようとする中国の努力に対応したサイバースパイだ。大学での広範な調査プロジェクトを狙って海上の設備や船舶の設計を入手している。怪しまれないようジャーナリスト、業界誌記者、関連する軍の組織や非政府組織(NGO)の一員になりすましてスピアフィッシングメールを送ってくる」と警鐘を鳴らす。
APT40は中国標準時に合わせて活動、中国業者が登録したドメインを使っていたことからアシがついた。中国海軍の近代化支援のため、少なくとも2013年から活動しているAPT40は、海洋技術を扱うエンジニアリング、運輸、軍事産業分野を標的にしている。一帯一路構想で戦略的に重要な国のカンボジアや香港、フィリピン、マレーシア、サウジアラビアを狙っていた。
外洋海軍の編成も視野
16年12月に南シナ海で中国人民解放軍海軍が米海軍の無人潜水機を拿捕したことがある。このあとAPT40は無人潜水機メーカーになりすまし、海軍研究に携わる大学にハッキング攻撃をかけていた。ファイア・アイは「APT40が海洋情勢と海軍技術に重点を置いていることから、最終的に外洋海軍を編成するという中国人民解放軍の目標を後押ししている」と指摘する。
自動運転で自律的に海中を動き回れる軍用無人潜水機の実用化に中国が成功すれば、米欧の空母打撃群や軍艦は南シナ海に入って行きにくくなる。水上に浮上しない無人潜水機を探知するのは難しいからだ。APT40は、カンボジア総選挙など、東南アジアや南シナ海の領有権争いに関係している国や組織を標的にハッキング攻撃をかけていることも分かっている。
対中強硬派アングロサクソンのアメリカやイギリスが中国の国家支援ハッカーの摘発を進めているのは、地政学上、中国を安全保障の脅威とみなさず、経済関係を優先させるドイツやイタリア、フランス、ハンガリーなど欧州大陸の対中宥和派に釘を刺す狙いがある。北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)、オーストラリア、ニュージーランド、日本が声をそろえて中国のサイバースパイを非難した。