コラム

「私はあなたのポルノじゃない」国際人権団体が韓国にデジタル性犯罪への取り組み求める 英はレイプの起訴率激減

2021年06月21日(月)10時55分

病理医は求刑2年だったが、判決はわずか10カ月の服役。父親は「10カ月ではあまりに短すぎる。厳罰化すべきだ」と訴えた。

上司からプレゼントされた時計に仕掛けられていたスパイカム

リー・エリンさんは既婚の上司から時計をプレゼントされた。エリンさんは寝室に時計を置いたが、ある日、置き場所を変えた。すると上司が「時計が気に入らないなら返して」と言い出した。不思議に思ったエリンさんがグーグルでその時計を調べると「スパイカム」であることが分かった。

エリンさんの寝室の様子はすべて上司にスパイカムと接続されたスマホを通じてのぞかれていた。グーグルに「隠しカメラが内蔵された時計」と入力すると、数え切れないほどの商品が表示された。上司には有罪判決が言い渡され、10カ月服役した。

エリンさんは隠し撮りされたことがトラウマになり、「一晩中泣いたり眠れなかったりした。落ち着くために薬を飲んだ」と打ち明けた。1年後もうつと不安の治療は続いたという。

パク・ジヨンさんはボーイフレンドのスマホに女性のスカートの下やお尻を盗撮した写真を見つけた。彼氏のクラウドにアクセスするとセックスした相手の写真が40~50枚も出てきた。そのうち4枚は自分の下着姿だった。知らないうちに盗撮されていた。他の写真は前の彼女らしく、寝ている間に全裸姿を隠し撮りされていた。

ジヨンさんは警察に被害届を出したが、弁護士は申告を取り下げるよう促した。ボーイフレンド側が名誉毀損と個人データを盗み見した容疑で告訴すると圧力をかけてきたためだった。結局、ボーイフレンドには罰金300万ウォン(約29万円)の有罪判決が言い渡されたのだが、周囲はジヨンさんがウソをついたと今でも信じているという。

男が盗撮に走る理由

韓国犯罪学研究所のタイ・チェン研究員は報告書の中で「盗撮による女性の客体化は男同士の関係を強めることを目的としている。それはとても奇妙な現象だ。なぜ男はのぞきたいのか。合意に基づかない画像を共有する時、男は喜びを感じるかもしれない。女性を客体として扱うことで自分の男らしさが仲間によって認識されたと感じているのだ」と分析している。

レイプにしろ、盗撮にしろ、共通しているのは女性の気持ちを全く考えていないことだ。いや、そうした考えを無視することに間違った男らしさを感じる文化が西洋にも東洋にも根付いているのかもしれない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、クルスク州の完全奪回表明 ウクライナは否定

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの攻撃非難 対ロ「2次制裁

ワールド

イラン南部の港で大規模爆発、14人死亡 700人以

ビジネス

アングル:ドバイ「黄金の街」、金価格高騰で宝飾品需
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story