- HOME
- コラム
- 欧州インサイドReport
- なぜ日本は「昭和」のままなのか 遅すぎた菅義偉首相…
なぜ日本は「昭和」のままなのか 遅すぎた菅義偉首相の「デジタル化」大号令
07年にロンドンに赴任した時も、携帯電話はアップルのiPhoneやサムスンのギャラクシーではなく、みなノキアの製品を使っていた。日本の携帯電話の方がはるかにお洒落だと感じた。しかし日本の時計の針は進む速度を次第に落とし、完全に止まってしまった、というより逆戻りしてしまった。
ICTを生徒に使わせている日本の中学校教師は2割以下
今月発表された経済協力開発機構(OECD)の「図表でみる教育2020年版」でも日本の「デジタル後進国」ぶりが改めて浮き彫りにされた。
発表資料では日本の中学校で授業やプロジェクトのために生徒にICT(情報通信技術)を「頻繁」もしくは「いつも」利用させている教員の割合は36カ国中、最下位の20%以下。一方、トップのデンマークは90%超。自らのスキル向上のためにオンラインコースやセミナーを活用している教員の割合は約10%で、40カ国・地域の中で39位だった。
思いつくまま日本のデジタル化が遅れている分野を例示してみよう。
・日本ではまだFAXが使われている。全世帯の3割が保有。古いデータになるが2013年時点で、人口1000人当たりの台数は日本約93台で、イギリスの約25台、ドイツの約46台、アメリカの55台に比べてはるかに多かった。
・日本の新聞発行部数は3781万部を誇る。読売新聞と朝日新聞の新聞発行部数は世界でも断トツの1位と2位。高齢の読者が多く、デジタル化が進められない。
・ネットフリックス(Netflix)の契約者数が500万人と少ない。全人口に対する加入率は4%弱。イギリスの契約者数は1300万人超で加入率は19%。DVDレンタル店が日本では減ったとは言え、まだ多く残っている。
・既得権益と規制に縛られて日本ではフィンテックの普及が中国や欧米諸国に比べ遅れている。日本のキャッシュレス決済比率は18年時点で18.4%。韓国の89.1%、中国の60%と比べ随分、見劣りする。
・職場や銀行では決裁のためハンコが使われている。
・テレワークが進まない。総務省の調査では、企業などで働く15歳以上で過去1年間にテレワークをした経験がある人は6.7%。経験がない人は73.2%。経験がない人のうちテレワークを希望する人は15.9%、希望しない人は82.5%にのぼった。
菅首相のデジタル化で一番の注目はGIGAスクール
今回の新型コロナウイルスでは人の接触回数を制限しなければ感染の拡大を防げないためデジタル化の重要性が改めてクローズアップされた。この反省を受け、71歳の菅首相は自民党総裁や首相としての就任会見で強調したデジタル化のポイントは次の通りだ。
(1)解禁されたオンライン診療は続ける
(2)ポストコロナ時代の子供たちの教育のためにGIGAスクール(義務教育を受ける児童や生徒のため1人1台の学習者用パソコンと高速ネットワーク環境を整備する5カ年計画)を強力に進める
(3)役所に行かなくてもあらゆる手続ができる行政のデジタル化の鍵はマイナンバーカード。健康保険証や運転免許証としても使えるようにする
(4)複数省庁に分かれている関連政策を取りまとめて強力に進める体制としてデジタル庁を新設
(5)光ファイバーに500億円の予算を付けた