コラム

「悪魔の化身」ボルトン米大統領補佐官の解任は日本にとってプラス、マイナス?

2019年09月12日(木)13時30分

「国家安全保障担当の大統領補佐官として、彼は政策の調整を期待されていましたが、独善的に政策を決定しようとし、他の高官が代替案を提案できる機会をほとんど設けませんでした。今回の解任でイラン、シリア、ベネズエラ、北朝鮮と戦争になる恐れは低くなりました」

「公平を期すと、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長やウラジーミル・プーチン露大統領への不信感など、ボルトン氏の直感の一部は正しいものでした」

「トランプ氏と違って、ボルトン氏は同盟の価値と拡大抑止の役割を理解しています。このため、ボルトン氏の解任は、トランプ氏が長期的な安全保障上の利益よりも米国の商業上の利益を優先できるようになることを意味しているのかもしれません。これはマイナス面です」

朝鮮半島から米軍撤退?

――核・ミサイル問題を巡る米朝交渉では、ボルトン氏の解任は北朝鮮への前向きなメッセージになります。トランプ大統領は米大統領選の前に交渉を動かしたいのでしょう。しかし、米軍が韓国から撤退する恐れも出てきますね。日韓の紛争に与える影響をどう見ておられますか

「北朝鮮は『人間の浮きかす』とこき下ろしたことがあるボルトン氏の解任を歓迎するのは間違いありません。ボルトン氏は今年2月にベトナムのハノイで開かれた米朝首脳会談でオール・オア・ナッシングのアプローチを取ることを主張し、米国務省の暫定計画をひっくり返しました」

<参考記事>米朝会談決裂の下手人は「壊し屋」ボルトンか

「現在のトランプ氏はより実際的な段階的アプローチをとる可能性が高くなっています。危険なのは、トランプ氏が北朝鮮の出方に関係なく、朝鮮半島から米軍を撤退させようとしているように見えることです」

「ボルトン氏は撤退に反対しました。ポンペオ国務長官を含めて他の高官すべてが朝鮮半島からの米軍撤退に反対しています。それが現実になるとは思いません」

「韓国と日本の紛争については、ボルトン氏が違いを克服するよう2つの同盟国を説得するため懸命に努力したようには見えませんでした。彼は見えないところで努力していたかもしれませんが、トランプ氏からの支持を得ることはできませんでした」

「プラス、マイナスのバランスを考慮すると、日本はボルトン氏の解任で恩恵を受けるでしょう。なぜなら、北朝鮮は核・ミサイル計画を完全にあきらめることはないにせよ、ある程度の制限を受け入れる可能性が高くなっているからです」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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