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安倍首相はロシアの「有益な愚か者」か プーチン大統領のプロパガンダ戦争
「プロパガンダの天才」ナチスのヨーゼフ・ゲッベルスは「ウソも繰り返せば、最後に人々はそのウソを信じるだろう」と言ったと伝えられるが、ヤコヴェンコ大使はその言葉通り実践しているように見えた。ロシア外交はフル回転で印象操作を行い、虚構を垂れ流している。
英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティ(HJS)のロシア研究センター所長、アンドリュー・フォクスオール氏は2016年10月、ロシアのプロパガンダに利用されている人脈を分析した報告書「プーチンの有益な愚か者たち」を発表した。
HJSのフォクスオール氏(筆者撮影)
14年12月、フランスの極右政党・国民戦線はモスクワの第一チェコ・ロシア銀行から940万ユーロを受け取った。マリーヌ・ルペン党首はプーチン大統領への敬意を隠さず、13年のロシア訪問では副首相と下院議長と会談した。
英国のEU離脱を主導した英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ元党首は、クリミア併合が強行された14年3月に、最も尊敬する世界の指導者としてプーチン氏の名を挙げ、シリア内戦への対応を「素晴らしい」と持ち上げてみせた。
「有益な愚か者」ネットワークはシンクタンクや大学の討論会、ロシアのニュース専門局RT(旧ロシア・トゥデイ)や情報通信・ラジオ放送局スプートニクを通じて世界中に張り巡らされている。謝礼は出演料として支払われる。
ロシアだけでなく、アルバニアやキプロス、マケドニアに散らばる「トロール部隊」がインターネット上にロシアに有利な偽ニュースやプロパガンダ情報を流し続けている。
英米など26カ国がロシア外交官150人を追放
ロシアの長期戦略は日米欧を分断し、EUをバラバラに解体することだ。しかし、ソールズベリー事件では英米を中心に26カ国と北大西洋条約機構(NATO)が結束して露外交官ら150人を追放した。
北方領土返還というエサに釣られた日本は先進7カ国(G7)外相声明でソールズベリー事件についてようやく「可能な限り最も強い表現で結束して非難する」と足並みをそろえたが、外交官追放の隊列には加わらなかった。
安倍晋三首相は5月下旬、ロシアを訪問、北方領土での共同経済活動についてプーチン大統領と会談するという。ドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相、イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相とプーチン大統領は「有益な愚か者」ネットワークを築き上げている。
ソールズベリー事件でプーチン大統領を正面切って非難しなかった安倍首相も「有益な愚か者」の一員になってしまったのだろうか。