コラム

独りぼっちの五輪 ドーピング疑惑のロシア陸上界からリオ五輪に出場した「美しすぎるジャンパー」

2016年10月28日(金)14時50分

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リオ五輪で励まされたというダリアさん Taishi Sasayama

 いざ会場に乗り込むと様子が違った。「意外にも、リオの会場は私を応援してくれる雰囲気に包まれていた」という。観客だけでなく、他国の選手までも「大変だったね」と声をかけてくれたり、ハグをしてくれたりして励ましてくれた。

 リオ五輪の後、2週間ロシアに帰った。バッシングが吹き荒れたとは思えないほどゆったりした生活を家族と送れたという。

「ロシアだけが問題じゃない」

 一連のドーピング問題についてダリアさんは「ロシアだけが問題じゃない」という。確かに、WADAの第三者委員会は複数の国でもドーピングが蔓延していた可能性を指摘している。

 今回の問題を組織の腐敗を正すきっかけにして欲しいと強調する一方で、撲滅には組織の立て直しだけでは不十分だという。

「ロシア国内には多くの選手やコーチ、トレーナーがいます。それを全て管理するというのは不可能です。ドーピングは誰の得にもなりません。数年かけてきた努力が一瞬で水の泡になるという意識を各々が持つべきです」

「私の体に流れる血が負けを許さないの」。授業中の小さなゲームにも本気になるのは、どんなことでも勝負にこだわる性格だから。「唯一人、リオに行けた秘密だね」と言うと、ダリアさんは照れ笑いした。

次は東京五輪

 身長181センチメートル。ロシアでも雑誌の表紙を飾るなどモデルとしても活躍するダリアさん。あまりの美しさに「結婚してください」と(冗談で)申し込んだが、あっさり却下された。

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ダリアさんと大志くんのツーショット Taishi Sasayama

 次は2020年の東京五輪。ダリアさんは29歳になるが「年齢的にもベスト」と意欲を燃やす。引き続き、米国・フロリダを活動拠点に五輪を目指す。

 目標は「何色でも良いから、メダルを取ること」。私も来年から全国紙の記者になる。「もしメダルを取ったら一番に取材させてね」。この頼みには笑顔で快諾してくれた。

 学生時代に培った縁。晴れの舞台で彼女を取材できる日が来るのを楽しみにしている。

(笹山大志=ささやま・たいし)
立命館大学4年生。現在、NY留学中。韓国・延世大学語学堂にも留学経験があり、北朝鮮問題や日韓ナショナリズムに関心がある。来年から報道の世界に進むのに備えて情報発信の仕方を勉強中。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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