文在寅支持層が女子アイスホッケー合同チームに反発する理由
女子アイスホッケー韓国代表選手らもテレビ局SBSの取材に対して「努力が水の泡になる」「北朝鮮の選手もいまさら新しいチームを結成することについて快く思わないのではないか」などと率直にコメントしている。
ではなぜ文政権と支持層の間に溝が生じたのか。
ここには韓国社会における世代間の認識の差が背景にある。
若い世代には「南北和解は最優先課題」となりにくい
現在、文政権を支えているのは90年代に「386世代」と呼ばれた「586世代(現在50代で80年代に学生運動を経験し、60年代生まれの世代)」だ。
1980年代、韓国は全斗煥大統領による軍事独裁政権下にあった。徹底した言論・思想統制の下、南北統一について語ることは思想犯として扱われることだった。その全政権に終焉をもたらしたのが1987年の「6月民主化抗争」だ。
大学生たちは軍事独裁政権の打倒をスローガンに、南北統一のタブーを打ち破ろうとした。このときデモの先頭に立ち運動を率いてきたリーダーたちが、現在、文政権の中心にいるのだ。韓国の80年代を経験している彼らにとっては、南北関係改善は平和そのものであり、否定される余地のない問題ともいえるのだ。
現在の20-30代にとっては、軍事独裁政権下の80年代よりも、金大中元大統領と金正日総書記による南北首脳会談後の2000年代の南北関係がよりリアルな記憶だ。つまりある程度の南北関係の進展を目にしてきた世代にとって「南北和解は最優先課題」とはなりにくいのだ。
文在寅大統領は反省の姿勢をコメント
もう一つ、理由がある。この世代は「政治的な大義」よりも「個の尊重」を重視する、一歩進んだ感覚が身についている世代であるという点だ。南北合同の行進は理解できても、長い期間、五輪に向けて汗を流してきた選手を犠牲にしてもいいのかという疑問が自然に生じるのだ。こういった反応について、文政権の中枢部にいる人々や、586世代に当たるメディア記者は当惑する様子も見せていた。
結局、文在寅大統領は反応を重く受け止めたのか、1月30日、大統領府で大臣、長官らを前に「単一チームを組むことで南北関係を改善し、平和な五輪のためにも良いと思ったのだが、選手たちの立場を事前にきちんと受け止めることができてなかった」と反省の姿勢をコメントした。これが功をなしたのか、一時下降気味だった支持率も回復している。
今回の平昌五輪問題を通じた、若い世代の「何のための南北融和なのか」という問いかけに、文政権がどう答えるのかによって、今後の韓国における民主主義の熟度が左右されるだろう。
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