韓国メディア界が背負う負の遺産
現在、KBSとMBCでは李明博・朴槿恵政権時に任命された理事長と社長の退陣に賛成する社員が8〜9割に達するという。知人に連絡をしてみると、現在、会社に出勤しながらも業務放棄をすることで会社に反発の意を示しているという。300人余りのスタッフが同様のサボタージュを決行している。
2012年に減少したMBCの労組員の人数も政権交代後、回復しており、9月には大規模ストライキを予定している。ストライキを理由に経営陣が退陣することはないだろうが、放送通信委員会がストライキを理由に社長らの進退について俎上に載せることは可能なのだという。放送通信委員会は政府機関のため、大統領側の基本的に大統領側の意志によって動く機関だ。
政権の意向に沿った放送局の運営がなされる構造の問題
しかし李明博・朴槿恵側の人間を辞任に追い込んだとしても根本的な解決にはならない。肝心なのは、政権与党の意のままに、放送局の経営陣が任命されるシステムそのものにメスを入れることだろう。
MBCの社長は現在、放送文化振興委員会の理事会によって決められている。理事会は与党・大統領府が推薦する人が6人、野党が推薦する人が3人という構成で、社長の任命には過半数の賛成が必要なため、事実上、大統領が社長を選任しているのだ。
与党民主党は野党だった昨年に、与党の意見に偏らないために、理事を与党7人、野党6人にしたうえで、社長の選出は3分の2以上の理事の同意を必要とする法案を国会に提出している。当時の与党の反対により国会での通過はかなわなかったが、文政権は今後、この案を推進するだろうことが予想される。
MBC労組内ではさらに一歩進んで、市民の投票によって社長を決める方法も提案されている。文政権がそこまで踏み込む可能性はいまのところ低いが、政権の意向に沿った放送局の運営がなされる構造をどこまで改善させることができるのか。今後を見据えたい。
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