加谷珪一が考える『ポスト新産業革命』

「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「小売編」

2018年03月12日(月)18時15分

すべての小売店が「ネット化」を迫られる? recep-bg-iStock.

個人の権利、私有の概念、社会の倫理など、18世紀の産業革命は物質的豊かさをもたらし、人間の価値観を中世以前とはまるで異なるものに変えた。

そして、本格的な「人口減少」時代を迎えた今、「AI(人工知能)」による新しい産業革命が、再び人間の価値観を根本から変えようとしている。

「人口減少」と「人工知能(AI)」後の日本をテーマにした新刊『ポスト新産業革命 「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』(CCCメディアハウス)を上梓する経済評論家の加谷珪一氏による特別寄稿(全4回:金融機関編/小売編/自動車産業編/不動産・住宅関連業界編)をお届けする。

新時代の見取り図「小売編」

AI(人工知能)時代における小売店は、ビジネスに対する考え方について根本的な転換を迫られる可能性が高い。表面的には従来と同じに見えるかもしれないが、今とはまったく異なる業態にシフトすると考えた方がよいだろう。

「セルフレジ」と「レジなし」は根本的に違う

このところ人手不足が深刻化していることから、コンビニ各社はセルフレジの導入準備を進めている。一方、米アマゾンはレジのない無人コンビニのサービスを2018年から開始した。両社の取り組みは似ているように見えるが、ビジネスに対する考え方は正反対であり、両者の立ち位置は根本的に違うということを理解しておくべきである。

セルフレジの導入はあくまで既存業務の効率化という文脈で解釈できる。このところ人手不足が深刻になっており、高い時給を提示してもアルバイトやパートが集まらないというケースが増えている。コンビニの現場では、外国人労働者に大きく依存するようになっているが、日本は本格的に移民を受け入れているわけではないので、外国人シフトにも限界がある。

こうした状況を改善するための手段がセルフレジである。レジを自動化し、精算業務の一部を顧客に実施してもらえば、3人で回していた店舗を2名で回せるようになる。セルフレジが普及すれば、人手不足がさらに深刻化しても、ある程度までなら従来の延長線上で対応することができるだろう。

この措置は、あくまで業務を効率化しただけであり、小売店としてのビジネスが変化したわけではない。ところが、アマゾンの無人コンビニは違う。両者の質的な違いは、対象となる顧客層に端的に表れている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力強化を指示 研究所視察=K

ワールド

米イスラエル首脳が会談へ、来月4日にホワイトハウス

ビジネス

GPIF、国債の直接入札可能に 財務省が省令改正へ

ビジネス

米GM、第4四半期決算と通期見通しが予想上回る 関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 5
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 10
    トランプが言った「常識の革命」とは何か? 変わるの…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 9
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 10
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story