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「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「小売編」
「待ち」のビジネスなのか「攻め」のビジネスなのか
コンビニをはじめとする一般的な小売店は、不特定多数の顧客を対象としている。誰が来るのか分からない状態で商品を並べているという点において、受動的なビジネスといえる。もちろん出店するエリアによって、平均所得や住民の職業など顧客の属性は変わるので、それに合わせて商品構成を変えるのは当然のことである。だが、具体的に「誰」が来店するのかまでは分かっていない。
だがアマゾンの無人コンビニは、基本的にアマゾンの会員を対象としたサービスである。どこに住んでいて、日頃どのような商品をどんな頻度で買っているのかアマゾン側は理解している。
アマゾンのようなECサイトは、システムを活用しておすすめ商品を顧客に提案するという機能を備えているが、一連の機能によってECサイトの販売金額は飛躍的に伸びた。アマゾンはおそらく無人コンビニでも同じような取り組みを実施するものと思われる。
AIを使って利用者の好みを判定することで適切な来店を促したり、利用者が欲しい商品をあらかじめ取り揃えることで客単価や販売数量を増やしていくことになるだろう。
AI時代にはすべての小売店が「ネット化」を迫られる
アマゾンが無人コンビニの本格展開に成功した場合、小売店の概念は一変することになる。つまり「待ち」のビジネスから、ネット通販と同様「攻め」のビジネスに転換することが可能になるのだ。つまりAI時代における小売店というのは、店舗があろうがなかろうがネット・ビジネス化が進むということを意味している。
日本勢の一部も、同じことを考えている。コンビニ2位のファミリーマートは2017年にLINEと提携したが、これはリアル店舗のネット・ビジネス化に向けた第一歩と考えてよいだろう。ファミリーマートは量販店のドン・キホーテとも資本提携(厳密には持ち株会社の資本提携)したが、ドンキもAIを活用した能動型店舗の開発を表明している。
すでにコンビニは全国各地に店舗を展開しており、有力な商圏はほぼ開拓し尽くしたともいわれる。しかも、今後は急激な人口減少と都市部への人口シフトによって多くの商圏が消滅する。数少ない商圏の中で、他社との競争に勝ち抜くためには、AIを使った能動型小売店へのシフトが必須となる。
冒頭でも説明したように、同じ商品を売っているように見えても、従来型小売店とAI型小売店の考え方は根本的に違っている。この価値観の転換についていけなかった小売店は厳しい展開を余儀なくされるだろう。
【第1回】新時代の見取り図「金融機関編」