コラム

「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?

2025年03月05日(水)18時31分

投機目的の買い占めが元凶とは言えない理由

政府や一部のメディアは、集荷業者を通さずに出荷されたコメを中間業者が投機目的で買い占めていると主張しているが、これは正しい認識とは言えない。一部の中間業者がコメを余分に確保しているのは事実だが、その理由は投機ではなく、外食産業を中心とした自社の顧客に安定的にコメを卸すためである。

国内のコメ市場は縮小が続いており、日本人1人が1年間に消費するコメの量は昭和の時代と比較すると半分まで減っている。ここまで市場が小さくなると、ちょっとした需要の変動が起こっただけで、価格は激しく上下する。


市場の縮小に対応するため、コメ農家が生産量を減らし続けてきたところに、コロナ危機の終了で外国人観光客が急増。寿司や牛丼などに対する需要が増大したことから一気に品不足が発生し、これが価格急騰を招いた。

小売店の場合、他の商品もあるので最悪コメが売り切れても何となるが、飲食店の場合、コメがなければ営業そのものが成り立たない。このため飲食店は多少価格が高くても、なじみの中間業者から安定的にコメを仕入れようとするのは当たり前の商行為と言える。

コメの生産量はすぐには増やせないので、来年以降も不足が続くことは確実であり、こうした状況では、外食産業を顧客とする中間業者は在庫を多めに確保せざるを得ない。コメは消えているのではなく、常に足りないというのが真相と言ってよいだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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