コラム

国債の大量発行が招く「インフレ税」とは? 損をするのは国民...教科書にある「基本」を認識すべきだ

2024年07月10日(水)18時09分

インフレが起きて最も得をするのは誰か?

2023年の消費者物価上昇率は3.2%だったが、このインフレ率が10年続いた場合、物価は1.4倍になる。現在、国民は約1100兆円の現預金を保有しているが、物価が1.4倍になると、10年後における預金の実質的価値は約790兆円になってしまう。

一方、政府は1000兆円を超える借金を抱えているものの、物価が1.4倍になれば借金の実質的価値は300兆円近く減る。これは国民の預金に約310兆円の税金をかけたことと同義であり、これは消費税に当てはめると約13年分に相当する。

ちなみにインフレの進行は円安だけが原因ではない。国債を発行して財政支出を増やすと総需要曲線がシフトし、物価をさらに押し上げてしまう。これは全ての経済学の教科書に書いている基本であり、国債増発はインフレを誘発し、事実上の大増税をもたらす。国民はこのカラクリに早く気付くべきである。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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