コラム

日本一高い「トーチタワー」だけじゃない...都心の「超高層ビル乱立」で、私たちの給料が下がるワケ

2023年10月25日(水)11時10分
日本一の超高層ビルとなる「トーチタワー」の建設現場

NED SNOWMAN/SHUTTERSTOCK

<東京駅近くで建設が始まったトーチタワーをはじめ、都市部で次々に建設が進んでいる超高層ビルは本当に日本にとって必要なのか>

日本で最も高い超高層ビルとなる「トーチタワー」の建設が東京駅近くで始まった。同ビルの高さは385メートルの予定となっており、11月に開業予定の麻布台ヒルズを55メートル上回って、国内で最も高いビルとなる。

このほかにも、都心部では次々と超高層ビルの建設が進んでいる状況だが、日本は長期にわたって景気低迷が続いており、オフィスに対する需要が伸びているわけではない。それどころか、今後は本格的な人口減少が予想されており、とりわけコロナ危機以降についてはテレワークの普及もあり、オフィスへのニーズは今後、急速に減ると予想する専門家も多い。

そうしたなか、次々と超高層ビルの建設が進む様子を見て、多くの人が事業として成立するのだろうかと首をかしげている。

先進諸外国の大都市でも、日本と同様、大型ビルの建設が続いているが、日本以外の各国は基本的に好景気が続いており、コロナ危機で一部のテナントが退去したとはいえ、オフィスビルへの需要は依然として大きい。アジアの新興国に至っては、依然として高い成長率を示しており、当然のことながら開発需要も大きい。

企業単体の視点で見ると合理性がある

日本経済の現状を考えると、都心部での再開発の進み方はやはり過剰であると判断せざるを得ないのだが、それはあくまでもマクロ的な視点での話である。困ったことに、企業単体としてはそれなりの勝算があっての決断であり、そうであるが故に開発ラッシュはそう簡単に収まらない。

先ほど説明したように、今後は人口減少に伴って、オフィスへの需要が減っていくのは確実である。だが、人口減少社会というのは利便性の高い地域への人口集約を伴うものであり、立地条件が良く築年が新しいビルは、引き続きテナントを確保できる可能性が高い。

分かりやすく言ってしまえば、都心部の一等地に大型の超高層ビルを建てれば、近隣に立つ低スペックのビルや郊外のビルからテナントを奪えるので、開発を手がける企業単体としては採算を維持できる。既に都心部では、10年前にできたばかりのビルが、最新ビルにテナントを奪われるケースが続出している。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story