コラム

日本の貿易赤字は過去最大...だが、この状況を経済成長につなげる道はある

2023年03月16日(木)18時19分
貿易赤字の拡大(イメージ画像)

ALEXLMX/ISTOCK

<2022年は通期で貿易収支が過去最大の赤字となった。たとえ資源価格や為替が落ち着いても、貿易赤字が常態化する可能性は高い>

日本の貿易赤字体質が定着しつつある。以前、本コラムにおいて2022年上半期の貿易赤字が過去最大になったという話題を取り上げたが、結局、通期も収支は赤字となり、比較可能な1979年以降で最大の赤字額だった。

足元では23年1月の貿易収支が3兆4966億円の赤字となっており、単月としてはやはり過去最大を更新している。このままいくと、日本の貿易赤字は常態化する可能性が高く、場合によっては産業構造そのものの見直しを迫られることになるかもしれない。

戦後の日本経済は一貫して輸出が輸入を上回る貿易黒字を計上してきた。旺盛な輸出に伴う企業の設備投資が国内需要を喚起し、賃金上昇と消費の拡大という好循環をもたらしたが、こうした製造業主導の成長モデルは、近年、大きく揺らぎ始めている。

このところ貿易赤字が巨額化している主要因は、言うまでもなく全世界的な資源価格や食料価格の高騰と、昨年後半に一気に進んだ円安である。これらは突発的な要因であり、資源価格や為替の状況が落ち着けば赤字も一定範囲に収束するとの解釈もできるだろう。だが赤字の中身を精査すると、必ずしもそうとは言えない面がある。

日本が輸入するものが変化している

原油や天然ガスの輸入が増大していることで赤字が拡大するのはやむを得ないにしても、それ以外の要因として目立っているのがスマートフォンやパソコン、テレビなど工業製品の赤字である。かつての日本は工業製品のほとんどを自国で生産でき、余剰生産分を輸出して外貨を稼いできた。日本が輸入するのはエネルギーや食料など国内調達できないものに限られていたが、近年、その常識が大きく崩れており、高度な工業製品までも輸入に頼るようになった。

日本の基幹産業である自動車はまだ高い地位を保っているが、今後、EV(電気自動車)化が進むにつれて、安価な車両を海外から輸入するケースが増えると予想されるため、場合によっては、自動車産業が家電やAV機器などと同じ道をたどる可能性もある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story