「金融所得課税」騒動に潜む、資産形成・お金の習慣のヒント
実際、年収ごとの税率を見るとその傾向は明らかである。例えば年収600万円の人の所得税率は、各種の控除を考慮すると現実には4.6%とかなり低い(この数字は申告所得が対象なので、大半のサラリーマンが該当する源泉徴収の場合、手厚い給与所得控除によって税率はさらに下がり、わずか2%台となる)。
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ところが年収が1000万円になると税率は約10%に、2000万円では約19%に跳ね上がり、1億円になると約28%にまで上昇する。だが不思議なことに年収10億円の平均税率は約23%と1億円よりも低い。
このカラクリこそが、先ほどから説明している金融所得課税である。高額所得者の場合、給与や役員報酬としてお金を受け取るよりも、投資収益としてお金を受け取った方が税制面で有利になるので、高所得になればなるほど、投資収益を重視するようになり、結果的に税率を低く抑えることに成功している。
もちろん投資にはリスクがあるので、簡単なことではないが、結局のところ高額所得者というのは何らかの形で事業を行っていたり、個人の才能で仕事をしている人たちなので、自身の年収にリスクがあることは最初から承知している。同じリスクを背負うのであれば、投資のリスクを取った方が合理的である。
どの時代に投資をスタートしても、長期投資で資産を築ける
岸田氏はここに課税すれば大きな財源になると考えたのだが、そうは問屋が卸さなかった。確かに富裕層は株式や債券の配当から所得を得ているので、金融所得課税を強化すれば、富裕層に対する増税となる。
だが現実に株式を保有し、そこから利益を得ている人の大半は中間層である。金融所得課税を強化すると、富裕層課税どころか中間層への大増税となってしまうため、国民からの反発はほぼ必至だった。
これが金融所得課税強化を先送りした理由だが、ここまで記事を読んだ方の一部は、疑問を持ったのではないだろうか。株式投資というのは所得が高い人が行うというイメージであり、実際、統計的なデータもそれを裏付けている。では、株式や債券から配当を受け取る人の大半が中間層というのはどういうことだろうか。
こうした「引っかかり」のある話というのは極めて重要であり、しばしば有益な示唆を与えてくれる。この手の話に興味を覚えるかどうかが、経済的に成功できる人とそうでない人の別れ道となることが多い。
今回のケースにおける「引っかかり」を解くカギとなるのは、株式投資を実践してある程度の資産を築き、その後、年金生活に入った高齢者の存在である。
現役時代に長期にわたって株式投資を続ければ、どの時代に投資をスタートした場合でも、退職時には驚くような金額に増えていることが多い。筆者はバブル崩壊後という最悪の時代に投資をスタートしたが、20年以上にわたって貯金の多くを投資に充当し、投資残高を積み上げた結果、資産額はすでに数億円規模になっている。
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