コラム

「金融所得課税」騒動に潜む、資産形成・お金の習慣のヒント

2021年11月18日(木)17時50分

同じように長期投資で資産を作ったサラリーマン富裕層は少なからず存在しており、こうした人たちは配当からもそれなりの年収を得ている。

だが年金生活に入って本業の収入がなくなると、年収は一気に300万~500万円に減ってしまうため、見かけ上、彼らは中間層にカウントされる。つまり配当を得ている中間層というのは、株式投資でそれなりの資産を築いたプチ富裕層と考えればよい。

額面のお金と納税後のお金の違いを混同してはいけない

資産を増やすためには、給与を上げて貯金をするというのがこれまでの常識だったが、日本の場合、給与を増やすと税金も一気に増えるので、思ったように資産は増えない。

ところが税制の仕組みをよく知っている人は、むやみに給与を増やすことは考えず、既存の給与の中から何とか投資資金を捻出し、長期にわたってそれを積み立てることで、配当収入を増やす方向を選択する。

筆者は実際にこの方法を実践したのでよく分かるが、20年以上にわたって投資を継続するのはたやすいことではない。しかしながら、この壁を乗り越えることができると、所得税を気にしなくても良い生活がやってくる。

個人で株式を所有する人の大半が源泉徴収を選択しているので、証券口座に振り込まれた配当金はすでに税金が差し引かれている。つまり、完全に手取りの金額であり、税金のことなど考えずに、そのお金は100%自由に使うことができるのだ。

年収が1000万円もありながら生活が苦しいという人をよく見かけるが、それは税金の仕組みを理解しておらず、額面のお金と納税後のお金の違いを混同していることが原因である。額面の給料が2割増えたからといって、可処分所得が同じく2割増えるとは限らない。

同じお金といっても、これから税金を払う必要があるお金と、税金を納入した後のお金との間には天と地ほどの違いがある。自由に使えるお金(可処分所得)を最大化し、そのお金を惜しみなく投資に充当できなければ、本当の意味での豊かな生活は送れない。

経済的に成功できる人は、税制を熟知する、納税後の金額を重視する、ムダな支出は一切行わない、消費ではなく投資にお金を使うといった生活習慣が徹底している。これはお金がない時から同じ行動パターンであり、逆に言えばこうした「お金の習慣」こそが大きな富をもたらす。

何十億の資産を持っているわけではないが、配当収入を老後の生活の足しにしている高齢者は、若い時から富裕層マインドを発揮していた可能性が高く、多くのサラリーマンはこうした人生設計を目指すべきだ。

◇ ◇ ◇

※筆者の新刊『150人のお金持ちから聞いた 一生困らない お金の習慣』(発行:CCCメディアハウス)が好評発売中。

投資、資産運用、住まい、時間の使い方、節約の仕方......。お金持ちになる、お金を増やす体質になるには、それなりの思考と行動理念が必要です。『お金持ちの教科書』シリーズ累計10万部突破の加谷珪一氏が図解入りでまとめた、誰でもすぐに実践できる「正しいお金との向き合い方」。

kaya20211118-okane-no-syukan-chart1.png

『一生困らない お金の習慣』28ページより

kaya20211118-okane-no-syukan-chart2.png

『一生困らない お金の習慣』41ページより

150人のお金持ちから聞いた 一生困らない お金の習慣
 加谷珪一 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story