派閥相乗りの岸田政権、キシダノミクスに新鮮味も実効力も期待できない
EUGENE HOSHIKOーPOOLーREUTERS
<令和版「所得倍増計画」を提唱するも、具体的な中身は見えない岸田新政権の経済政策は、これまでと変わり映えしない内容になりそう>
臨時国会で首班指名が行われ、岸田文雄自民党総裁が第100代首相に選出された。岸田氏は選挙戦を通じて「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する」と述べ、令和版「所得倍増計画」を提唱したが、具体的な中身ははっきりしていない。
実質的に総裁の座を争った河野太郎規制改革担当相が脱原発や年金制度改革など明確な改革プランを打ち出していたのとは対照的だ。派閥相乗りでの勝利だったこともあり、岸田内閣は折衷案的な政策運営が避けられないだろう。
今回の総裁選は事実上、岸田氏と河野氏の一騎打ちに近い状況となった。岸田氏は各派閥の支持を広く取り付ける戦略であり、一方の河野氏は事実上の脱原発や年金制度改革など、従来政治からの脱却を訴えており、政策的には分かりやすい構図となった。
岸田氏は、新自由主義的政策との決別という形で改革を強調したが、新自由主義的という言葉は曖昧で、人によってその使い方はさまざまである。小泉政権的な規制緩和路線に否定的という意味であれば、過去の自民党政治との決別というより、むしろ従来路線の踏襲と考えたほうが分かりやすいだろう。
実際、岸田氏は所得倍増計画と称して、看護師・介護士などの賃金アップや教育費・住居費の支援などを掲げている。これらのテーマは、過去の政権でも議論されており、岸田政権が初めて打ち出した政策ではない。
今後の議論の焦点は年金制度改革か
アベノミクス以降、継続している量的緩和策についても、基本的に2%の物価上昇率目標を維持するとしており、大きな変更は実施しない。菅政権は安倍政権の後継として誕生したものの、地銀改革やデジタル庁の創設、脱炭素政策への転換など、小泉改革的なメニューを数多く提示してきた。岸田政権では、地銀改革や脱炭素政策の強化など、賛否両論となる政策は回避するはずなので、具体的な経済政策は、後期の安倍政権に近い形となるだろう。
良くも悪くも、大きな変化のない政権ということになるが、総選挙も控えて議論となりそうなのが年金制度改革である。
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