コラム

コロナ対策で巨大イカ像を作り、20兆円は手付かず...これで経済が上向く?

2021年07月20日(火)20時50分

88~89年に竹下政権は「ふるさと創生事業」を立案し、全自治体に一律で1億円を交付するという思い切った政策を実施したが、豪華絢爛なトイレや金の像など無駄遣いが横行し、十分な成果を上げることができなかった。

今回のコロナ関連交付金も同様で、ある自治体は有効な資金使途を立案できず、巨大なイカのオブジェを設置して、多くの住民をあきれさせた。日本では金額ありきで予算が組まれ、各省が自らの権益に沿って予算要求を行うので現実社会との乖離が生じやすい。

財政出動というのはただお金を支出すればそれで効果が得られるというものではない。経済の仕組みに合った適切な配分が必要であり、それができなければ財政赤字を拡大するだけとなる。

日本が持続的な成長を実現できないのは、企業の生産性が伸び悩んでいることが根本原因であり、財政出動の多くはこれを改善するための投資に振り向ける必要がある。コロナ関連予算の場合には、まずは困窮した生活者支援が最優先事項だ。日本はお金の「使い方」をもっと真剣に考える必要があるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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