平井デジタル相の「恫喝」発言を、このまま個人の問題で終わらせてはいけない
ISSEI KATO-REUTERS
<オリパラアプリをめぐる平井大臣の疑惑は、個人の問題では収まらない構造的な問題が表面化したものと捉えるべき>
平井卓也デジタル改革担当相が、東京五輪向けのアプリ発注に関して、受注企業への恫喝を示唆する発言を行ったことが問題視されている。平井氏への批判が高まっているが、少し視点を変えるとさまざまなことが分かってくる。
発言は4月に行われた内閣官房IT総合戦略室における幹部会議のもので、本来は非公開だが、音声が外部に流出した。平井氏は「NECには死んでも発注しない」「象徴的に干すところを作らないとなめられる」「脅しておいたほうがいい」などと発言しており、相手を恫喝するよう職員に指示したとも受け取れる。
直接、事業者を脅したわけではないが、大臣として不適切であることは言うまでもない。だが、この発言を少し角度を変えて眺めてみると、さまざまな解釈ができる。
「事業者からなめられる」「脅しておいたほうがよい」といった言葉は、裏を返せば、官庁側がIT事業者をうまくコントロールできていない現状をうかがわせる。実際、官庁側がIT事業者を制御できず、一部で法外な支出を強いられているというのは長年、問題視されてきたことである。
2001年には公正取引委員会が「1円入札」問題について調査し「注意」を行ったこともある。「注意」は独占禁止法に基づく公式な処罰ではないが、それに準じる重みを持つ。
平井氏はIT業界を知り尽くした人物
1円入札とは、IT事業者がシステムの入札の際に1円で落札してしまい、その後、割高な価格で受注を繰り返して利益を得る手法である。システムはひとたび特殊な技術仕様にしてしまうと、これに沿って開発や運用を続けるしかなくなり、他の事業者と競争させることが難しくなる。
官庁側が技術に疎いことを逆手に取り、一部事業者が長年にわたって同一システムの受注を独占できるよう工作していたのだ。当時、この問題は国会でも追及されたが、自民党内で率先して改革に取り組んでいたのが、当時まだ新人議員だった平井氏である。
この時代は、公共事業の予算削減で建設利権が縮小する一方、IT予算は毎年、増額される状況だった。新しい巨大政治利権としてITが注目され始めており、「ITゼネコン」などという言葉も生まれていた。つまり平井氏はIT業界の表も裏も全て知り尽くした人物ということになる。
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