財務省人事から考える、年金減額と消費増税のシナリオ
岡本薫明氏の次官就任と続投が意味していること
岡本氏は入省後、一貫して予算を扱う主計局を歩み、秘書課長、主計局次長、主計局長という重要ポストをすべて歴任している。財務省的には文句なしのエリートといってよいだろう。同省の場合、次官候補者はかなり前から絞られていることが多く、今回の人事が定常モードへの回帰だと考えれば、「次」の人物もすでに想定されている可能性が高い。その人物とは、今回、官房長に就任した茶谷栄治氏(86年)である。
茶谷氏は、岡本氏と同様、秘書課長や主計局次長など、次官になるための主要ポストを歴任している。政治的な動きは見せず、典型的な財務官僚タイプと評されており、同省的にはまさに王道といってよい。
茶谷氏が次官の最有力候補と仮定すると、来年の人事において官房長から主計局長に転じ、2021年に次官に就任する可能性が高い。岡本氏が3期続投するとは考えにくいので、そうなると、来年の人事では、現在、主計局長の太田充氏(83年)が、1年だけ次官を務めるというシナリオが有力だ。
岡本氏と太田氏は同期であり、太田氏は文書課長や秘書課長を経験していない。もし太田氏が次官に就任した場合、これも異例人事のひとつと見なせるかもしれないが、その後、茶谷氏が次官に昇進すれば、勝氏以来、続いてきた変則的な人事はすべて終了となる。
本来の姿に戻った財務省は、これでようやくポスト消費税の施策に専念できるわけだが、同省の次の狙いが社会保障制度改革、つまり簡単に言ってしまえば、年金の減額であることは明白だ。加えて言うと、安定財源を確保するため、10%以上への消費増税についてもすでに検討に入った可能性が高いだろう。
今回の参院選では、年金2000万円問題という想定外の事態が発生したものの、安倍政権は争点をボカすことで何とか乗り切った。選挙後に記者会見に臨んだ麻生財務大臣は、消費増税について「消費税率の引き上げは最初から申し上げてきた。その意味では信任をいただいたと思う」と、増税しないという選択肢はなかったとも受け取れる発言を行っている。
また、今回の参院選で228万票を獲得した「れいわ新選組」が消費税廃止を訴えたことについては、「福祉は負担と給付のバランスの上に成り立っているが、給付が増えて負担を減らすことが成り立つと思っているのだろうか」と否定的な見解を示している。
年金減額の強化と支給開始年齢の引き上げが焦点に
実は選挙前にも、社会保障の財源である消費増税の見通しについて微妙なやり取りがあった。7月3日に開催された党首討論会では、安倍首相が「(10%への増税を実現できれば)今後10年は消費増税は必要ないと思う」と述べたが、翌日には公明党の山口那津男代表が「責任ある発言とは受け取れない」とこれを否定したのである。政府内部の実務レベルでは、10%以上への増税がすでに既定路線となっていることを伺わせる出来事といってよいだろう。
では、今後、実施される社会保障改革とは、どのようなものになるのだろうか。
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