東京の経済成長率が低いのはなぜ?
東京と地方の差は縮小しているということになるが… AlxeyPnferov-iStock
<地方と東京の格差が是正されたと単純に言っていい話ではない。経済発展の歴史から読み解けば、世界における日本経済の危機が浮き彫りになる>
都道府県ごとのGDP(国内総生産)統計で東京の成長率が著しく低いという結果が出ている。一部では東京の一極集中が是正されているとポジティブに捉える意見もあるようだが、必ずしも手放しで喜べる状況ではない。都道府県ごとのGDP推移について探った。
東京の1人当たり県民所得の伸び率はなんと42位
内閣府は、「国民経済計算」という形で日本全体のGDPについて四半期ごとに結果を公表しているが、都道府県ごとのGDPである「県民経済計算」についても年に1度、公表している。現時点では2018年の8月に公表された2015年度の数字が最新版である。
都道府県ごとのGDPは、基本的に全国のGDPと似たような手法を用いているが、作成自体は各都道府県が独自に行っており、使用する基礎資料などに違いがある。このため厳密には同一基準の比較ではなく、各県の数値合計も全国のGDPと多少のズレがあるが、状況分析において支障が出るレベルではない。
県民経済計算によると、2015年度における東京の実質GDP成長率は1.8%で、日本全体の数値である1.6%を上回ったものの、順位は19位とそれほど高くなかった。1人あたりの県民所得についても、絶対値では断トツの1位だが、伸び率は42位と低迷している。
経済紙が一連の統計について「東京の一極集中に異変」というタイトルで記事化したこともあって、ネットを中心にちょっとした話題となった。
あらゆるGDP統計に共通することだが、大きな流れをつかむには、1年ごとの数値だけでなく、過去からの推移を見る必要がある。2010年から2015年にかけての成長率を単純平均すると、もっとも成長率が高かったのは宮城県、2位は三重県、3位は岩手県、4位は群馬県、5位は愛知県だった。東京は21位となっており、東京の低迷は数年タームで見ても同じである。
一般的に、日本においては東京にすべてが集中しており、東京が日本の経済を牽引しているというイメージが強い。では、なぜ東京の成長率が低く、地方が高いという結果が出ているのだろうか。ヒントになるのは上位に入っている都道府県名である。
製造業の影響が極めて大きい
1位の宮城県と2位の岩手県は、多くの人が想像する通り、震災復興特需が関係している可能性が高い。特に宮城県には、震災直後から多くの人や資金が集まったこともあり、賃貸物件がほぼ満室という状況が続き、繁華街はかなりの活況を呈していた。2015年のランキングでは宮城県、岩手県が上位に入っていないことや、建設業の伸びが大きいことなどからも、復興事業による影響が想像できる。
復興需要は特殊事情といってよいのでこれを除外すると、注目すべきは三重県と愛知県である。これはトヨタ自動車など、愛知県を中心に展開する自動車産業の効果が大きいと考えられる。
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