コラム

東京の経済成長率が低いのはなぜ?

2019年01月22日(火)13時30分

日本全体のGDPは個人消費が6割を占めており、輸出が直接的にGDPに占める割合は低い。だが輸出によるGDPの数値が小さいことと、製造業に依存していないことはまた別問題である。

日本メーカーの一部は米国やアジアなどに生産拠点を移しており、以前と比べて輸出の絶対量は減ったが、それでも基幹部品を日本国内で製造し、海外の生産拠点に輸出するケースはたくさんある。日本メーカーの主な販売先は米国なので、米国の景気が良くなり、輸出が伸びると国内の設備投資が拡大し、これがGDPを押し上げるという図式は今も変わっていない。

しかも、製造業依存は国内の消費についてもあてはまる。

高度成長期であれば、製造業による巨額の設備投資が国内サービス産業を拡大させ、労働者の賃金が増加することで、消費が増えるというメカニズムが働いていた。本来であれば、日本はこうした途上国型の消費拡大プロセスから脱却し、純粋な消費需要に基づく個人消費の拡大によって経済を成長させる、いわゆる内需拡大型経済にシフトする必要があった。

残念ながらそのようなシフトは進まず、国内サービス業の賃金は低いままとなっている。このため国内の消費をリードするのは、依然として賃金の高い製造業の従業員であり、最終的には国内の消費についても、輸出の増減と製造業の賃上げに大きく左右される状況が続いている。

内需で成長できる国にシフトしなければ豊かさは維持できない

ここ数年、日本経済が何とか成長を維持できたのは、絶好調ともいえる米国経済のおかげであり、米国でモノを売る製造業が成長をリードしたことは紛れもない事実である。そうであるならば、メーカーの拠点が集中している愛知県や三重県、あるいは北関東のGDP成長率が高いことはうなずける話といってよいだろう。

日本は東京と地方に大きな格差があり、これをどう是正するのかが常に議論の的となってきた。確かに、一連のGDP統計を見れば、東京と地方の差は縮小しているということになるが、これが米国経済に依存した結果だとするならば単純には喜べない。

製造業というのは、いつの時代も、後発の国が先行している国を追い上げ、そして抜かしていく。オランダの製造業は英国に抜かれ、英国の製造業は米国に抜かれ、米国の製造業は日本に抜かれた。歴史に例外はなく、その流れで行けば、日本もいつかは必ず後発国に完全に追い抜かされる(実際に半分はそのような状況に陥っている)。

つまり、米国向けの輸出や現地生産で稼げる日はそう長くは続かない可能性が高い。

将来にわたって今の生活水準を維持するためには、消費主導で経済を回す仕組みをできるだけ早く構築しなければならない。だが消費主導で豊かな国を作ることは、製造業主導で豊かな国を作ることと比較して、難易度が高い。抜本的な仕組みの改善に手を付けなければ、実現は難しいだろう。都道府県別のGDP統計が示しているのは、現状打破の必要性であると解釈すべきだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「影の船団」に偽造保険証書発行、ノルウェー金融当局

ワールド

焦点:対日「相互関税」24%、EU超えに政府困惑 

ワールド

OPECプラス8カ国、カザフの超過生産巡り協議へ 

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story