コラム

通勤電車や新幹線がやたらと混んでいるのはなぜ?

2018年07月11日(水)12時00分

ここ10年、日本の総人口はあまり変化していないが、高齢化は急速に進んでいる。高齢化が進むと、地方から都市部への人口流入が増えるので、多くの人が都市型の生活をするようになる。

日本全体で見ると、鉄道輸送はGDPの増加分しか増えていなくても、都市部への人口集中が発生すれば、都市間輸送や都市部の通勤輸送は全体の伸び以上に増える。

では、こうした混雑を解消するために、輸送力を一気に拡大すればよいのかというと、そうもいかないのが実状だろう。今後、日本の総人口は減少に転じるため、利用者総数が減る可能性が高いからである。

激しい通勤ラッシュを解消するため、小田急電鉄は3000億円を超えるともいわれる費用を投じて複々線化の工事を行った。利用者にとっては朗報だが、長い目で見れば、混雑は自然と解消に向かう可能性もあり、費用対効果は微妙なところである。

一般に鉄道各社が追加のインフラ投資に消極的なのは、将来の利用者減少を見込んでいるからという指摘がある。もしそうだとすると、しばらくは鉄道の混雑が続くことになりそうだ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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