コラム

通勤電車や新幹線がやたらと混んでいるのはなぜ?

2018年07月11日(水)12時00分

東海道新幹線の乗客数の伸びは突出している

以上の話は、主に鉄道全体の輸送量についてだが、路線ごとのデータを見ると数値にはかなりのバラツキがあることが分かる。

新幹線は過去10年で利用者数が2割以上も増加した。一方、鉄道全体の利用者数の伸びは約9%にとどまっており、新幹線の伸びが突出している。つまり、新幹線の利用者数の増加は経済の伸び以上ということになる。

新幹線の利用が突出して増えているということであれば、都市間輸送が活発になっているとの仮説を立てることができるが、すべての都市間輸送が活発とは限らない。

新幹線全体の利用者数と東海道新幹線の利用者数を比較すると、輸送量の伸び率は両者ともほぼ同じ水準になっている。しかし、2011年に九州新幹線が、2015年に北陸新幹線が、2016年に北海道新幹線が相次いで開業しており、新幹線全体の路線距離も2割ほど伸びている。言うまでもなく東海道新幹線の路線距離は変わっていない。

同じ路線距離で利用者数が2割増えるケースと、路線距離が2割伸びて乗客が2割増えるケースでは混雑状況が異なるのは当たり前だ。

JR東海では乗客数の増加に伴い、10年間で1割ほど東海道新幹線の運行本数を増やした。しかし、2割増えた乗客のすべてをカバーするには至っておらず、単純計算では各列車において1割ほど乗客が増えた形になる。現実には利用しやすい時間帯の列車に乗客が集中するので、こうした時間帯の列車が「混雑している」という印象になるのは当然の結果かもしれない。

同じ都市間輸送でも、東京-名古屋といった主要都市間での利用が極端に増えている可能性が高く、こうした区間では特に混雑しているイメージが強くなっているはずだ。

人口の都市部への集中が混雑の原因?

同じような現象は首都圏の通勤電車にもあてはまる。

関東地方の鉄道利用者数は過去10年間で約7%増えたが、その間、路線距離も3%以上伸びた。一方、通勤ラッシュ時の列車遅延がよく報じられる東急田園都市線(渋谷-中央林間)は、同じ路線距離で利用者数が7%伸びている。通勤時間帯の増加はもっと多いと考えられ、一部の区間では激しい混雑となっている。

東海道新幹線のような主要都市間輸送を担う路線や、首都圏の通勤路線において激しい混雑が発生するのは、人口動態の変化が影響している可能性が高い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イランの橋梁や発電所への攻撃警告

ワールド

米中西部でICEがパレスチナ系市民拘束、地元イスラ

ワールド

仏韓、「戦略的パートナーシップ」に関係格上げへ 中

ビジネス

為替は必要ならそういう措置取れる=介入で片山財務相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 9
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story