コラム

これが日本の近未来?わずか6畳のアパートに注目が集まる理由

2018年03月20日(火)13時00分

写真はイメージです。 7maru-iStock.

<極狭でも利便性が勝ればそれでいい! 潜在的二ーズをくみ取った狭小アパートの急成長からわかるのは...>

床面積がわずか9㎡(6畳)という狭小アパートが話題となっている。狭いスペースを最大限に活用するアイデアが受けており、奇をてらった戦略に見えなくもない。

だが人口減少と都市部への集中化という大きな流れを考えると、こうした住居は将来の都市生活の一つのあり方を提示しているとも言える。不動産投資の世界では不良資産予備軍とも言われてきた、狭いワンルーム・マンションについても再考が必要かもしれない。

スペースを極限まで絞りつつ快適さも追求

狭小アパートを提供しているのは、東京都内でアパート建設や管理業務などを手がけるスピリタスという企業である。創業は2012年と社歴は若いが、狭小アパートに的を絞り急成長しており、すでに70棟を超える物件を提供したという。主な顧客は富裕層を中心とした個人の不動産投資家で、自社で土地を仕入れ、アパートを建設した上で投資家に販売するのが主な業務だ。

同社が手がけるアパートには、スペースを生かすための工夫が随所に見られる。若年層の単身者はあまり湯船につからないので浴槽はなく、すべてシャワーブースになっている。洗面台は設置しておらず、洗顔や歯磨きはキッチンの流しで済ましてもらう(男性単身者の場合、洗面台があっても、そうしている人は多いかもしれない)。

天井にはロフトが付いており、寝るときには梯子でロフトに登る。トイレやシャワールームは、ドアの向きの関係でデッドスペースが出来ないよう配置が工夫されている。また建築基準法や自治体の条例を徹底的に研究し、廊下のスペースなども法の範囲内で極限まで絞った。その結果、狭小であるにもかかわらず、洗濯機と冷蔵庫を室内に設置することが可能となっている。

また、同じ土地の面積でより多くの戸数を確保できるため、平均的な利回りは通常のアパートより高くなるという。利回りの話は入居者が確保できればという条件付きだが、入居者の評判も上々のようだ。

最近は最小限度のモノで暮らす「ミニマリスト」がちょっとしたブームになるなど、若年層を中心に、ムダなものにコストをかけたくないという人が増えている。どうせ広い家に住めないなら、家賃が安く機能的なものがよいと考える居住者は一定数存在しているだろう。スピリタスの狭小アパートはこうしたニーズにうまく合致した商品といってよい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国実弾演習、民間機パイロットが知ったのは飛行中 

ビジネス

中国の銀行、ドル預金金利引き下げ 人民銀行が指導=

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ビジネス

日経平均は大幅反落、一時3万7000円割れ 今年最
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story