値上げに踏み切った鳥貴族が直面する「600店舗の壁」とは?
実は、同社は2017年7月期の業績について、約100店舗を新規出店し、売上高、経常利益とも約25%増加させるという強気の見通しを立てていた。だが現実の売上高は約2割の増加にとどまり、利益に至ってはマイナスになってしまった。出店が予定通りにいかなかったという現実は、店舗数が増えたことによって、従来と同じペースの出店が難しくなってきた可能性を示唆している。
実は居酒屋の業界には店舗数が600店舗付近に大きな壁が存在しており、この壁を乗り越えることは実はそう容易ではないのだ。
居酒屋の業界に立ちはだかる600店舗の壁
鳥貴族の躍進が話題になる以前、勢いがある居酒屋チェーンといえば「ワタミ」であった。ワタミは現在の鳥貴族と同様、ハイペースで業容を拡大してきたが、2014年を境に業績が悪化した。2014年と言えば、同社の店舗数が過去最大の約650店舗になった年である。
ワタミはもともと居酒屋チェーン「つぼ八」のフランチャイズとして事業をスタートしているが、つぼ八も、かつては破竹の勢いで全国展開し、ピーク時には600近い店舗を構えていた。しかし現在ではワタミに完全に追い抜かれ、280店舗と規模の小さい展開を余儀なくされている。
つぼ八も、そこから派生したワタミも600店舗あたりを境に業績がピークを迎えている。鳥貴族の店舗数は現在560店舗となっており、そろそろ600店舗に近づこうとしている。同社は2022年に1000店舗の展開を目指しており、2018年3月期についても80店舗を新規開店するとしている。
同社の2018年3月期における業績予想は売上高370億円、営業利益は24億円とかなり強気だ。出店がスムーズに進み、1店舗あたりの売上高もさらに拡大するというシナリオである。少々、楽観的な予想であることは否定できないが、もしこの数字を達成できれば、600店舗のカベを超え、もう一段の成長が見込めるかもしれない。
一方、来期の業績が減益になるようなら、拡大シナリオそのものに疑問符が付くことにもなりかねない。低価格をウリにした焼鳥チェーンから、メジャーな外食産業に脱皮できるのか、同社の真価が問われている。
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