トヨタが抱える憂鬱と希望 淘汰の時代に立ち向かう術とは
今年1月のデトロイトモーターショーで登壇した豊田章男社長 Mark Blinch-REUTERS
<自動車業界再編に次世代エコカーシフト。同業他社へ救いの手を差し伸べるトヨタ自体も、国策とEV生産に頭を抱えている?>
トヨタが今期(2018年3月期)の業績見通しについて上方修正を行った。2017年3月期の決算では大幅な減収減益を余儀なくされたが、足元の4~6月期決算は売上高が前年同期比で7%増加するなど、まずまずの内容であり、これによって通期の見通しも引き上げられた。だがトヨタの周辺には何とも憂鬱な雰囲気が漂っている。目先の業績はともかく、かつて経験したことのない大きな難題がトヨタの前に立ちはだかっているからだ。
自動車産業は淘汰の時代に入った
トヨタを憂鬱にさせる原因となっているのは、国内自動車産業の再編と次世代エコカー戦略である。トヨタは日本経済を支える大黒柱であると同時に、日本では数少ないグローバル・カンパニーである。それゆえにトヨタが背負う重荷は他の国内企業とは比較にならい。
これは、先日のマツダとの提携話にもあてはまる。
トヨタとマツダの両社は8月4日、相互に約500億円を出資して資本提携を行うと発表した。米国において共同で新工場を建設するほか、電気自動車(EV)の開発でも協業するという。
世界の自動車販売は好調な米国経済に支えられ、これまで順調に拡大してきたが、米国では新車需要をかなり先取りしてしまったとも言われており、そろそろ市場が頭打ちになる可能性が指摘されている。こうした環境においては、大手による寡占化が進む可能性が高まってくる。
実際、自動車業界は大手4社による寡占化の傾向が鮮明になっている。2016年の世界新車販売台数は、1位が独フォルクスワーゲン(VW)で1031万台、2位がトヨタで1017万台、3位はゼネラルモーターズで1000万台、4位は仏ルノー・日産連合で996万台だった。5位は韓国現代、6位は米フォードとなっているが上位4社とは少し開きがある。今年はルノー・日産連合の傘下に入った三菱自動車の生産が回復しているので、上位4社への集中化はさらに進むだろう。
こうした市場では中堅以下のメーカーはかなり厳しい展開を余儀なくされる。今回のトヨタとマツダの提携はあくまで両社の協業が目的だが、中長期的にはマツダ救済という側面があることは否定できない。トヨタは今年2月にスズキと業務提携しているが、業界では「遺言提携」などと呼ばれており、スズキの創業家がトヨタに生き残りを託したとも言われる。
トヨタはすでにダイハツとスバル(旧富士重工)をグループに取り込んでいるが、中堅以下の国内メーカーが続々とトヨタに助けを求める図式となっている。トヨタにとってシェアを高めることは重要だが、マツダの売上高はわずか3兆2000億円とトヨタの8分の1以下の規模しかない。
マツダ側に圧倒的にメリットのある提携をトヨタが受け入れたのは、トヨタが自社のことのみならず、日本の自動車産業全体のことを考えているからに他ならない。ニッポンを背負うトヨタにとっては、自らのことだけを考えればよいという状況にはないことがよく分かる。
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