コラム

トランプ2.0、強気の「MAGA」が逆目に出る時

2024年11月26日(火)14時00分

支持者は2期目のトランプに米経済の立て直しを期待するが JEENAH MOON–REUTERS

<2期目の経済政策で金利が上昇すれば、アメリカで大規模な不況が起きかねない>

トランプ2.0(第2期政権)で、筆者は「怖いもの見たさ」の心境だ。アメリカは、世界は、そして日本はどうなってしまうのだろう?

トランプが米経済復活のために提案するのは規制緩和、法人税引き下げ、そして国内の産業を守るための関税引き上げ、アメリカ人の雇用を守るための不法移住者追放等々。これらは、うまくいくのか。


では、トランプ1.0(第1期政権)の実績はどうだったか。最後はコロナでひどい目に遭っているが、2017~19年の3年間でGDP(名目)は14.5%伸びている。これは直前のオバマ政権の最後の3年間(14~16年)の11.3%に比べるとましだが、バイデン政権の21~23年の29.8%には遠く及ばない。トランプ1.0は、法人税を4割も切り下げて21%にしたが、その効果はバイデン政権が収めたということになる。

不法移住者の追放だが、国境で追い返した分を含めるとトランプ1.0では93万人強。やり方の違いがあるので一概に言えないが、オバマ時代よりむしろ少なめだった。一方、合法的な移住者は入れていて、トランプ1.0の合計は約330万。オバマ時代とそれほど変わらない。

トランプは18年3月から一部の中国産品への関税率を上げ始め、19~20年にかけて、中国の対米輸出と対米貿易黒字は5分の1程度減少している。一方、対中関税の引き上げは、米国内のインフレを激化させてはいない。つまりトランプが実際にやったことは、言うほどひどくはなかったのだ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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