コラム

アベノミクスの負のパズルにはまった、岸田政権はこのまま立ち枯れ?

2023年11月14日(火)16時00分

だから結局は、1人4万円の「減税」でごまかすしかしょうがないのだが、ならば起死回生の経済政策を発表する、などと大口をたたかないほうがよかった。

このあたり、今の政権には社会の声を読んで、政策にうまく色付けする知恵者がいない。そして、故安倍元首相の強烈な個性で、「総理1人で何でも決める」と世論に思わせてしまったツケを、岸田首相は払わされている。首相も野党も、世論に迎合して何かしてみせるので精いっぱい。「今の状況はこうだから、自分はこうしたい」という熱が足りない。それなら大臣や党幹部にもっと責任を持たせ、百花繚乱の活力と混乱の中で裁断を下すやり方もあるのに。

重要政策の策定、そして演出を、首相補佐官が担うのは当然だが、これが特定の官庁出身者に力が集中すると問題が生じる。どうしても見方は一面的、かつ手法は上からの指令によるものになる。欧米諸国と同じく、政府の仕組みだけでなく、政界地図、社会の状況を肌感覚で知っている政治家、マスコミ関係者などを用いるべきだろう。

日銀による公的な利上げの有無にかかわらず、これからは金利上昇、円高への転換、景気悪化の局面に入りそうだ。だから総選挙のタイミングをつかめないまま、来年9月の自民党総裁選になだれ込むだろう。自薦他薦、星のつぶし合いで結局、岸田再選か、それとも? 衆議院議員現職の任期は2025年10月まで。歌舞伎は続く。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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