コラム

「北朝鮮・ロシア反米同盟」の思惑はどこにある?

2023年09月30日(土)15時15分

ロシアが北朝鮮に砲弾の供与を求めたという観測もある。ロシアは今、年間200万発の砲弾を生産していると言われるが、戦時にはこれでは足りない。北朝鮮は長年、準戦時体制にあり、砲弾の余剰備蓄を抱えている。さらにロシアは、近年の労働力不足の中で、北朝鮮からの出稼ぎ労働者を大きく受け入れたいところだろう。一方、一部で言われている「北朝鮮兵士のウクライナ戦争参戦」は多分ない。言語の障壁、補給の困難などがある。

両国は軍事協力を強化すると言っているが、極東のロシア軍はもともと弱体。だから両国は時々、日本海で共同演習を実施して在日米軍、自衛隊、韓国海軍を牽制する程度のことしかできまい。陸上で共同示威行動をすれば、中国を刺激してしまう。

金正恩は、日本生まれの母親と何度か来日してディズニーランドにはまっているという報道がある。日本との関係樹立、そして日本からの投資に多くの期待を持っているだろう。筆者のひいき目かもしれないが、金正恩、金与正(キム・ヨジョン)の兄妹は、日本の指導者についてアメリカ、韓国に対するような罵詈雑言を避けている。北朝鮮が過度の対米恐怖を卒業して21世紀の世界に踏み出せるよう、日本は何かできないものか。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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