コラム

安倍元首相の死去後にようやく成就したアベノミクス

2023年07月21日(金)17時00分

今回の税収増は皮肉なことに、安倍政権退場後に顕著になっている。19年の消費税率引き上げの効果、海外要因でのインフレ激化、円安による輸出収入の膨張が押し上げ要因になっているのだろうが、同じ要因は今、賃金引き上げ、消費増加、投資増加のプラスのスパイラルを生み出そうとしている。アベノミクスは安倍元首相の死後、海外要因を触媒に成就した、と言える。

今の状況は居心地がいい。税収が増えたおかげで、昨年度は約2兆6000億円の決算剰余金が生じた。この半分以上は財政法第6条によって、国債の償還資金に回される。さらに今年度は、12兆円分の赤字国債の発行がとりやめになる。

今後必要なのは、物価の上昇を上回る賃上げ、そして、現在の過度の円安の修正だ。そうしないと、日本の価格水準が欧米を大きく下回り、さまざまなゆがみが生じる。

経済政策は理論だけでできるものではない。特に予算は、さまざまな勢力が資金を求めて押し寄せる政治そのもので、さばくにはバランス感覚が必要とされる。「やはり極端はいけないんでしょうな。バランスの問題なのだと思います」──昔、ある財務事務次官が筆者に言ったことだ。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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