コラム

デスマッチを続けるロシアと西側諸国に日本が示すべき新機軸

2022年07月13日(水)10時56分

この混迷のなか日本は来年、G7議長国として世界を取りまとめるべき立場にある。先進諸国が軒並みガバナンスを失っているなか、3年間国政選挙がないという稀有な立場にある岸田政権の責任は大きい。

広島でのG7首脳会議の議題をどうするかが1つのチャンス。これまでのように、米・EUの主張と日本の諸省庁が出す役人的なアイデアをコピペしただけの、力のない作文はやめるべきだ。

日本は、明治維新による近代化以降、諸価値観の間で模索・苦悩してきた経験を売り物にできる。その迫力を背に、背骨の通った哲学を世界に提案してほしい。旧社会主義諸国や途上諸国には、民主主義・市場経済など19世紀に起きた産業革命以来の近代の諸理念が今でも有用であることを説く。

だがこれを、アメリカのネオコンのような上から目線ではなく、先進国自身がちゃんと振る舞うことで彼らを引き付ける。

これを世界の多くの人に受け入れられるような言葉にするなら、筆者は「新・人間主義」という旗印を提案したい。漠然としているから反対しにくいのがミソで、この中には格差の解消や人権の確保、民主主義、そして自由などが詰め込まれている。

中世に起きた西欧ルネサンスのヒューマニズムは宗教のドグマから人間を解放したが、現代の新ヒューマニズムはつまらない国家間の対立から人間を解放するものだ。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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