コラム

日本経済は本当に縮小しているのか

2021年12月08日(水)15時50分

今はバブル崩壊後のトラウマが深く残っていて消費者は財布の口を締めることばかりを気にする。企業は給料のベースアップを抑え投資も控える。すると経済は伸びないから、消費者も企業もますますケチになる。こうして自縄自縛の悪循環、デフレ・サイクルにはまっているというわけだ。これでは本当に貧乏になってしまう。

「ビッグマック指数」という指標がある。万国共通のビッグマックを現地の通貨建てにするといくらで買えるかを比べ、そこから実際の購買力に基づくレートを算出するものだ。

アメリカでは5・65ドル、日本では390円なので、1ドルは現在の約115円あたりではなく約70円となる。115÷70=1・64となることからドル建てのGDPは公表される数字より64%も大きくなる。無理に背伸びする必要はない。

しかし老朽化していくインフラを毎年計画的に改修するとともに、増える一方の激甚災害への備えを固め再生エネルギーへの投資を増やす。企業の増収分は、ベアは無理でもボーナスで確実に一部還元することを決めておくだけでもデフレの悪循環は断てると思う。縮む縮むと思えば、必ず縮む。

世界の中でも日本は、経済成長を実現できる歴史的・社会的な要因が豊富なのだから、もっと伸びやかにやったらどうだろう。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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