日韓関係は歴史と感情の自縄自縛
日韓は古来の隣国だから、その関係は数々の怨念と思惑に彩られている。それも、時の大国も引き込んでの話だ。唐の宮廷で両国の使節が席次の上下をめぐって争ったり、白村江(はくすきのえ)では新羅が大国唐の海軍を引き込んで日本に壊滅的打撃を与えたり、高麗が元寇にくみするかと思えば、豊臣秀吉の軍は明との戦いに赴く途上、朝鮮半島を踏みにじる。
江戸時代、幕府は対外関係をオランダにだけ限ったと言われるが、実は朝鮮通信使という使節団が1811年まで12回、日本を訪れている。それは当時の李王朝が女真族の支配する清朝に朝貢関係を強制されるなか、清への当て馬として対日関係を評価したためだと、かつて駐韓大使を務めた小倉和夫氏は評している。
20世紀初め、日韓両国はロシアやアメリカ、イギリスなどが織り成すパワーゲームの中で立ち回るようになる。日清・日露戦争での勝利で日本が強大化すると、警戒した李王朝はロシアに接近する。日本はこれを止めようとして、血で血を洗う抗争と数々の悲劇の後、1910年には日韓併合を実現してしまう。そしてこのことは、英米両国にあらかじめ是認されていた。
アメリカは1905年7月の桂太郎首相とウィリアム・タフト大統領特使の間の合意で、朝鮮半島における日本の支配的地位を認める。アメリカはそれと引き換えに、スペインから奪って1902年に植民地化したフィリピンへの権利を日本に認めさせている。イギリスもまだ日露戦争が続くなか、日英同盟を改定して朝鮮半島への日本の支配権を認めている。
今年5月、ドイツはアフリカの旧植民地だった現在のナミビアでの虐殺(20世紀初頭)について正式に謝罪し、道義的な責任に基づく支援金(法的賠償ではない)として約11億ユーロの支払いを表明した。これとほぼ同時にフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、1994年にルワンダで起きた虐殺にはフランスに大きな責任があることを認めた。
韓国政府はすわ、とばかりに独仏政府に対し、日本も謝罪すべきだと注進するかもしれない。しかし、日本の首相は折に触れて反省・謝罪の声明を出しているし、韓国大統領と会う際のスピーチでは過去の歴史に対して反省の念を表明するのがほぼ慣例になっている。
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