コラム

中国が攻めアメリカが守る?「台湾危機」を鵜呑みにする危うさ

2021年04月10日(土)16時30分

台湾は今や、半導体生産で世界を牛耳る。株式の時価総額がトヨタの2倍のTSMC(台湾積体電路製造)などは、世界中から注文を受けて半導体を受託生産している。これら企業の顧客の多くは西側だが、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)、SMIC(中芯国際集成電路製造)など中国の電子企業とも人員、技術一体となった協力関係をつくり上げてきた。

米中対立が激しくなった今、彼らは表向き中国との関係を切っているが、中国の工場を先端設備付きで売却したり、5G技術を提供したりする不透明な動きもある。そして民主主義を本心、大切にしている台湾市民も、不況になった場合には「自由よりパン」で大陸になびくかもしれない。

ねじれているのは日本も同じ。「台湾を守る」と言っても、200発超の中国の中距離ミサイルが日本を向くなかで首相は自衛隊に出動命令を下せるか? 日本の基地から米軍機や艦船が台湾に向けて出動するのさえ、国内では反対の声が起きかねない。

しかし面白いことに、中国もねじれている。習近平は中国軍の「平和病」を何度となく

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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