コラム

新型コロナで肥大化する国家の危険度

2020年04月14日(火)16時26分

翻って日本でも、長期国債の約47%は日銀が保有し、上場投資信託(ETF)も日銀が現行から2倍となる年12兆円を買い上げる構えでいる。

さらに国家は、個人の所得補償に大々的に乗り出した。この数年先進国では、ロボットに職を奪われる労働者に対する国家による所得保障の是非が議論されてきたが、コロナで収入を失った人たちへの補償という形で、未来が一歩早く実現してしまった。

これは、台風や大地震で所得や財産を失った人たちにも国家補償を行うという発想にもつながる。日本経済の生産力と貯蓄の規模を考えれば可能性はある。だが、「補償」の肥大化による国家資本主義が勤労意欲や経済効率を損なえば有害だ。災害時の個人補償については、その可能性とルール作りを進めるべきだし、個々の審査を迅速化するにはマイナンバーの普及などを通じて国民の所得をガラス張りにし、デジタル化することが不可欠になる。

コロナに打ちひしがれてはいけない。だが、政府への過度の依存も問題だ。官民のバランスを保ちながら、次の疫病を見据えた対策を整備する必要があろう。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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