アメリカの肉食系企業が株主第一主義を悔い改める訳
トランプ大統領は、東部から中西部に広がるラストベルトの困窮白人層の利益を主として代弁してきたが、目立たない形で大企業の利益にも奉仕してきた。2017年の法人税大幅引き下げがそれである。しかし大企業の利便を一方的に図ったままでは、トランプも大統領選で苦戦するだろう。財界に減税の見返りを求めていたとしても不思議はない。
今回の声明はCSRの考え方を米国版経団連が自ら採用した形だが、おそらく大統領選で候補者たちから批判の的にされるのを防ごうとしているのだろう。
しかし利益至上主義でない企業は、動物を襲わないライオンと同じく不自然な存在だ。まともに実行すれば米企業の利益率も株価も低下する。アメリカは日本も含め、他国の企業がそこを出し抜くことがないよう米企業と同様のガイドラインを採択するよう圧力をかけてくるだろう。
またヘッジファンドや年金基金など、カネが余ってしょうがない組織は、米国株を見限って、利益率は低くとも安定している日本企業の株に投資してくるかもしれないし、原油や土地への投機を増やす可能性もある。
米企業の新たな動きは、企業が社会の共有資産的なもの、つまり儲からないものに変質していく予兆かもしれない。これでは、アニマルスピリットを持つ人材は企業に行かなくなるだろう。経済の管理はAI(人工知能)とテクノクラート、生産はロボットが担当する。アニマルスピリットは、スポーツや街中でのけんかで発散――そんな時代が来るのだろうか。
<本誌2019年9月17日号掲載>
【関連記事】これが米大企業のほとんどを所有し牛耳るビッグ・スリー
【関連記事】民主党女性議員4人組「スクワッド」とトランプは似たもの同士
※9月17日号(9月10日発売)は、「顔認証の最前線」特集。生活を安全で便利にする新ツールか、独裁政権の道具か――。日常生活からビジネス、安全保障まで、日本人が知らない顔認証技術のメリットとリスクを徹底レポート。顔認証の最先端を行く中国の語られざる側面も明かす。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
「またトラ」でウクライナ停戦が成立すれば、北朝鮮兵が平和維持軍に? 2024.11.12
中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない 2024.10.22
「焦げたアンパンマン」? 石破首相はワルになれ! 2024.10.08
強権政治家、故フジモリ大統領を礼賛した日本社会のリーダー像 2024.09.26
テレグラムCEOドゥロフは、国境を突き破るIT巨人 2024.09.06
日本にキレるロシアには大人の対応を 2024.08.24
米経済の立て直しには「根本治療」が必要だ 2024.08.01