ロシアの軍事的挑発と脆弱な経済──プーチン政権カウントダウン
プーチン大統領の賞味期限は? Maxim Shemetov-Pool-REUTERS
<「なめるなよ」と管を巻く危うい酔態はロシアの伝統? ベネズエラ派兵のパフォーマンスに見るロシアの命脈>
3月23日、ロシアはベネズエラに輸送機と老朽旅客機を使い、貨物35トンと軍事要員100人以上を派遣した。かつて供与した地対空ミサイルシステムS300の修理のためとみられている。
実態は「アメリカの工作で」政権から引きずり降ろされようとしているマドゥロ大統領へのてこ入れだ。アメリカは軍事介入をためらっている。その間にロシアのプーチン大統領はわずかな兵力で情勢を変え、「アメリカの鼻を明かして同盟国を守るロシア」を世界に印象付ける好機と考えたのだろうか。
91年のソ連崩壊以来、ロシアが恐れてきたのは、NATOが旧ソ連諸国をのみ込み国境に迫ること。そして欧米がロシア国内の格差につけ込んで、反政府運動をあおることだ。それがウクライナやシリア、今度はベネズエラで攻勢に出た背景にある。
その様は「俺様をなめんじゃねえ」と酔って管を巻くロシア人にそっくりだ。口ではすごんでも、経済力という足元が危ない。いまプーチン政権の頭には、2つの相反する方針がせめぎ合っている。プーチンはこの2年ほど、折に触れて「第4次産業革命」に言及。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった技術革新による産業構造の変化から脱落すれば、「ロシアは後進国たることを運命付けられる」と言う。
プーチノミクスの失敗
しかし役人が実行する政策は、ソ連さながらの締め付けやアフリカへの傭兵派遣といった対外進出ばかりが目立つ。第4次産業革命の基盤となるネットには、中国並みの規制を目指す始末。3月10日には首都モスクワで、ネット規制法案に反対する市民約1万人が抗議の声を上げた。
最近では汚職摘発を名目とした国会議員や元大臣の拘束が相次ぐ。検事総長が議場に踏み込み、議員の不逮捕特権剝奪をその場で強要したり、深夜に公安当局が元大臣の自宅に踏み込んだり。エリートの間では疑念と恐怖が芽生えている。
24年のプーチン退陣を前に、検察や公安を利用しての権力・利権闘争が既に始まっているのではないか。自分から仕掛けないとやられてしまうのではないか、という懸念だ。こうしてロシアは頭で「先に進まなければ」と分かっていても、ソ連の記憶が染み付いた手足は後ろに進んでしまう「統合失調」にある。
プーチン時代は当初、政権発足時から最大で5倍に跳ね上がった原油価格に助けられ、GDPが6倍以上にもなる驚異の成長を達成。だが08年の世界金融危機で原油価格が暴落して以降、成長力も息が切れた。
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