コラム

世界を支配するのは、米軍でも米ドルでもなく「米国法」

2019年03月16日(土)11時15分

よくアメリカの国力は「たそがれ」「終焉」などと言われる。確かに米経済は財政破綻とバブル崩壊の一歩手前だ。だが08年の金融危機の際には、日欧を尻目に素早い立ち直りを見せた。一方、アメリカに取って代わると言われる中国は、実際にはドル建ての対外債務が巨額に上り、返済用ドル資金の入手に四苦八苦。「世界政府」になるどころの話ではない。

こういう世界で、日本、ドイツあるいはフランスのような、米同盟国はどうしたらいいのだろうか。アメリカが自国の法律を世界に適用させるならば、外国もその法制の作成・修正に参加させてもらいたい。「代表なくして課税なし」というのは植民地時代のアメリカが、本国のイギリスに対して発した言葉だ。人口、あるいはアメリカでの日本企業の納税額にでも応じて、米議会に代表を送ったり、大統領選挙人を選ぶ権利を要求したりしてもいいはずだ。

それが「世界政府」に望まれる在り方ではないだろうか。そうでなければ、ただの世界征服になってしまう。

<本誌2019年03月19日号掲載>

※3月19日号(3月12日発売)は「ニューロフィードバック革命:脳を変える」特集。電気刺激を加えることで鬱(うつ)やADHDを治し、運動・学習能力を高める――。そんな「脳の訓練法」が実は存在する。暴力衝動の抑制や摂食障害の治療などにつながりそうな、最新のニューロ研究も紹介。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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