コラム

トランプバブル崩壊は近い 「貪欲」が資本主義の終焉を招く?

2018年09月19日(水)12時03分

中国経済が空前の成長を遂げ、世界に安価なモノを提供した時代は終わる。そうなれば、低成長と高物価(70年代のスタグフレーションの再発)を前提にした経済・社会運営が必要になってくる。低成長でも回る経済、低成長でも満足する社会の到来となる。

こうした危機の当初、日本はひどい目に遭うだろう。輸出が急減して景気は急落し、就職氷河期が再来。資産の半分を株で運用している年金運用は莫大な含み損を抱え、支給への不安が高まる。「政府の指令で経済を運営せよ」「金持ちの資産を分配せよ」などの声が満ち、ポピュリストの野党が政権を取るかもしれない。

90年、筆者はソ連の計画経済が音を立てて崩壊していく様を、外交官として現地で見ていた。だから、言う。指令経済や国家資本主義への幼稚な期待はやめてほしい。人間という予測不能な生物が集まってつくる経済を、計画や指令で動かせるはずがない、と。

むしろ危機後に日本政府がやるべきことは債務危機に陥った企業に対する公的資金注入だ。同時に、危機に伴う円買いで法外な円高が再現しないよう、機敏なドル買い介入をすることだ。

【参考記事】年表:リーマンショック10年 経済崩壊から再生までに起きたこと

※本誌9/25号(9/19発売)「リーマンショック10年 危機がまた来る」特集はこちらからお買い求めになれます。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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