中ロの裏庭に変化あり 中央アジア「共同体」の現実味
こうしたなかで中央アジアの今の潮流は、域内団結の強化に向いている。これまで唯我独尊的姿勢を見せてきたウズベキスタンが、昨年末に就任したミルジヨエフ大統領の下、域内で友好協力姿勢に転じたことが大きい。この国は人口、軍事力とも域内最大。全ての中央アジア諸国と国境を接する唯一の国で、地域の核とも言える存在だ。
中央アジア諸国はかつて、中央アジア協力機構(OCAC)というASEAN型の地域協力機構を持っていた。04年にロシアが加盟してこれをユーラシア経済連合に吸収合併してしまったが、これからはOCAC復活への機運が盛り上がるだろう。
実は日本はOCAC消滅と前後して、「中央アジア+日本」対話というフォーラムを立ち上げ、外交会議を定期的に行うなど地域連携への灯を細々と掲げてきた。同種のフォーラムは欧米も立ち上げたが、11月10日、ミルジヨエフは中央アジア諸国だけでのサミット開催をぶち上げた。
こうして中央アジアの足元は固まっていく。この地域の自立と繁栄に資するなら、日本はAIIBやロシアと提携して構わない。中ロの裏庭に相当するこの地域にしっかりした自立的な存在ができれば、日本の対中、対ロ外交にもプラスだ。
ただ不安要素もある。製造業が多くの国で育っていないこと、中東への出稼ぎ者が過激派ムスリムとなり帰国する問題、カザフスタンで迫る権力者交代などだ。だがロシアや中東、アメリカのネオコンなど外部勢力が扇動しなければ、中央アジアが大荒れすることはないだろう。
<本誌2017年11月21日号掲載>
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