コラム

消費低迷の特効薬は消費税減税だ

2016年03月02日(水)17時25分

 そして金融政策・財政政策のシナリオ、ポリシーミックスを考慮すれば、次のような政策を実行することが必要ではないか。

・日銀が2%インフレ目標を達成・安定化するまでの期間(具体的には2016年度、2017年度)の時限措置として政府は8%から5%への消費税減税(財政政策)を行う。

・日銀は展望レポートで示しているとおり2%のインフレ目標を2017年度前半中に達成することに全力を尽くす。なおインフレ率の基調判断は、消費税減税による物価押し下げ効果や原油価格の影響を差し引いた上で行う。

・2%インフレ目標達成から半年間の経過期間を置いてデフレからの完全脱却がなされたことが確認された場合、改めて毎年1%ずつのペースで消費税増税を行う。

・最終的に8%まで消費税率を戻しつつ、物価や経済動向を勘案しながら、日銀は段階的に出口政策に踏み込む。

 2年間の限定で消費税減税を行うために必要な財源は、8%から5%への引き下げの場合は累計16.2兆円となる。減税を行えば経済成長も高まり、デフレ脱却が進むことも相まって税収も増加することが見込まれる。合わせて外国為替特別会計に眠る内部留保(積立金)22.7兆円(2015年3月末時点)や、政府資産の売却を前倒しで実行していくこと、さらに長期金利がマイナス金利に突入する状況下ならば国債を増発して財源に充てることも検討に値するだろう。

 消費税増税は社会保障の財源を確保することが目的だが、消費税そのものには、低所得者ほど負担率が高まる逆進性の問題や、消費税率を引き上げるたびに経済の落ち込みが深刻となる、税率を引き上げるほど益税に代表される税の不公平が助長されてしまう、といった様々な問題点を抱えている。社会保障の財源を消費税増税に頼るのではなく、経済成長による税収増や現行の相続税を廃止の上で新たに100兆円とも言われる相続対象資産に一律に20%の税率を課すといった対策を行えば、消費税率は5%据え置きでも問題ないと筆者は考える。こうなれば、消費税率を8%まで引き上げる必要もないため、日銀は財政政策の影響を考慮することなく、出口政策に集中することが可能となるだろう。

プロフィール

片岡剛士

三菱UFJリサーチ&コンサルティング、経済・社会政策部主任研究員
1972年生まれ。1996年慶應義塾大学卒業後、三和総合研究所入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、2005年より現職。早稲田大学経済学研究科非常勤講師、参議院第二特別調査室客員調査員、会計検査院特別研究職を兼務。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」――デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店、第4回河上肇賞本賞受賞)、「日本経済はなぜ浮上しないのか アベノミクス第2ステージへの論点」(幻冬舎)など多数

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