コラム

「韓国人自身の失敗」──朴正煕と尹錫悦の歴史認識は韓国社会に受け入れられるのか?

2023年05月10日(水)12時51分

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冷戦下の国際社会への対応を説いていた朴 BETTMANN/GETTY IMAGES

日本統治期に教育を受けた朴正煕は、明治期の日本の近代化を世界的な成功事例として持ち上げる一方、同じ時期の国際社会への対応に失敗した朝鮮王朝の腐敗と不効率を批判した。

その上で植民地に至るまでを、韓国人自身の失敗の歴史だと認識し、国民の意識改革の必要性を強調した。加えて、冷戦下の国際社会において北朝鮮をはじめとする東側の脅威に対抗するために、日米両国との協力の必要を国民に説いた。

こうして見ると、尹錫悦の歴史認識が朴正煕のそれに極めて近いことが分かる。とはいえ、同時に重要なのは、このような朴正煕の歴史認識が、当時の韓国において定着せず、現在にまで至っていることである。

それでは尹錫悦は自らの歴史認識をもって韓国国民を説得することができるのか。軍事クーデターをもって政権を獲得し、18年間、強大な権力を振るった朴正煕ですらできなかったことが、30%台半ばの支持率に低迷する大統領に可能なのか。

それともわれわれの目の前に広がる「新冷戦」的な状況が、「冷戦」時代の指導者にも不可能だったことを可能にさせるのか。その道のりは決して容易ではなさそうだ。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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