コラム

日本国民の「韓国への感情」の深刻さを、韓国はまったく理解できていない

2022年10月04日(火)17時47分

日本の「空気」を読めない韓国

とはいえその結果として、他国との外交関係を損なうなら、それもまた「内政のための外交」にマイナスのはずだ。それでも対日関係において不用意な発言が続くのは、究極的には彼らが今の日本で韓国への国民感情がいかに大きく悪化し、元徴用工問題をはじめとする歴史認識問題を世論や政府がいかに深刻に受け止めているか理解していないからである。

事実、大統領選挙後に相次いで日本を訪れた新政府関係者は、知日派として知られる新任大使を含めて、等しく「日本の雰囲気がこんなに悪いとは思わなかった」という言葉を残している。

背景にあるのは、日韓両国の歴史認識問題の深刻さに対する理解のギャップである。日本ではこの問題は請求権協定をめぐる法律的解釈の問題であり、だからこそ18年の韓国最高裁判決後に大きく開いた解釈の差が埋まらない限り、問題が解決することはない、と重く考えている。しかし韓国ではこの問題が単なる「認識」の差にすぎず、容易に政治解決できると軽く考えている。

だからこそ、韓国側は日本側が日韓関係について慎重になる理由が理解できず、日本側を刺激する言動を繰り返す。外交交渉より前に、両国はこの認識の差から埋める必要がありそうだ。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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