佐渡金山の世界遺産登録問題、韓国も日本も的外れ
だからこそ、現在進行している大統領選挙においてもこの問題は出てこない。唯一目立つのは、与党側の候補者である李在明が1月28日、自らのフェイスブックに書き込んだ短い文章である。この中で彼は次のように述べている。
佐渡鉱山は強制動員が行われた生々しい現場であり、残酷な帝国主義侵奪の産物です。 にも拘わらず、その世界文化遺産への登録を推進する事は、日本が人権蹂躙の醜悪な実態を隠す為の手段としてこれを用いようとしているものだと言わざるを得ません。 佐渡鉱山のユネスコ文化遺産登録は、軍艦島に続くもう一つの歴史蛮行です。 強制動員被害者に対する大法院の判決を否定し、謝罪すらしない日本が、強制徴用の現場を世界文化遺産に申請する事は、深刻な歴史否定であり、被害者への拭い去ることのできない侮辱です。
李在明の言葉に示されているのは、佐渡金山の世界遺産登録申請を、日本政府による「歴史否定」を巡る動きとして位置付ける理解であり、そこには今の韓国におけるこの問題に対する認識が典型的に表れている。そしてこのような認識の背後に存在するのは、第二次安倍政権成立以降の「(彼らのいう所の)極右」自民党政権が、歴史修正主義的な動きを進めているという理解であり、だからこそユネスコにおける世界遺産登録もその一環だと考えられている。当然の事ながら、そこにおいてはそもそも佐渡金山がどのような鉱山であり、その世界遺産申請において日本政府がどのような説明を行っているか、についての関心は存在しない。
暫定リスト入りした時は菅直人政権
とはいえ、少し振り返ればわかるように、このような韓国国内の理解は明らかに的を外したものである。何故なら佐渡金山の世界遺産登録を目指す動きは、既に20年以上の歴史を持つものだからである。新潟県と佐渡市が国内暫定リスト入りに向けての申請を文化庁に行ったのが2007年、ちょうど同じ鉱山である石見銀山が世界遺産として登録された年の事である。その申請が認められ暫定リスト入りする事が最終的に確定したのは、2010年6月。当時の与党は自民党ではなく民主党であり、首相は就任したばかりの菅直人であった。その菅直人はこの僅か2か月後、時あたか恰も迎えた韓国併合100周年を前に、いわゆる菅談話を発表した。談話で菅直人は次のように述べている。
私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みる事に率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れる事は出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。
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