文在寅の「訪日拒否」は、有利な立場を自ら手放す慢心が生んだオウンゴール
しかしながら、だとすれば、その読みは明らかに間違っている。なぜなら、いったん五輪を終えてしまえば日本側には文との首脳会談に応じる理由は何もなくなってしまうからだ。
加えて、菅政権は11月までの間に総選挙を控えており、韓国に対して批判的な世論が大勢を占めるなか、日本政府には韓国側との対話に応じる合理的理由は存在しない。つまり、文政権はそのまま首脳会談に応じていれば得られたはずのポイントを、自ら失ったことになる。
そして、今回の首脳会談拒否は、日本側の選択次第で韓国側に対して大きなマイナスポイントをもたらす可能性すらある。なぜならこれにより、今度は日本側が「対話を拒否しているのは韓国政府だ」と、国際社会にアピールすることが可能になるからである。こうして日本側は、日韓関係の悪化をもたらしているのは文政権だとして、自らが対話に応じないことを正当化することもできる。
2021年7月の韓国政府の選択が、日韓両国が再び攻守の立場を入れ替える分岐点だった――。われわれは何年か後、今回の出来事をそう振り返ることになるのかもしれない。

アマゾンに飛びます
2025年3月18日号(3月11日発売)は「日本人が知らない 世界の考古学ニュース33」特集。3Dマッピング、レーダー探査……新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
「竜頭蛇尾」な戒厳令と、罪を免れたいユン大統領のジレンマ 2025.02.19
韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視している 2025.01.15
注目は、韓国ドラマばりのエリート・韓東勲が復活できるか──戒厳令後の韓国 2024.12.27
韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの矜持だった 2024.12.10
韓国・尹錫悦大統領に迫る静かなる危機と、それを裏付ける「レームダック指数」とは 2024.11.13
「ハト派の石破新首相」という韓国の大いなる幻想 2024.10.16
全斗煥クーデターを描いた『ソウルの春』ヒットと、独裁が「歴史」になった韓国の変化 2024.09.10